慢性呼吸不全患者におけるHRQLと生理学的指標・呼吸困難度・ADLとの関連

【はじめに】慢性呼吸不全患者に多い労作時呼吸困難は, 体動, 運動を敬遠させ, 循環系の機能低下, 呼吸筋, 四肢筋の筋力低下を招き, 呼吸困難を増悪させ, ADLやQOLの低下も招く. 近年は慢性呼吸不全患者のADLやQOLについての重要性が認識されている. JonesらのThe St.George's Hospital Respiratory Questionnaire(以下SGRQ)は慢性呼吸器疾患の健康関連QOL評価(以下HRQL)として使用されている. 今回我々はHRQLと肺機能, 全身持久力, %標準体重(以下%IBW), ADL障害との関係について検討した. 【対象,...

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Published in理学療法学 Vol. 30; no. suppl-2; p. 347
Main Authors 志賀育子, 間瀬教史, 眞淵敏, 和田智弘, 竹村雅俊, 永井絵里, 米田千夏, 田中里味, 福井みどり, 細戸妙子, 南都香織, 畠中輝昭, 川上寿一, 藤原誠
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本理学療法士協会 20.04.2003
公益社団法人日本理学療法士協会
Japanese Physical Therapy Association (JPTA)
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ISSN0289-3770

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Summary:【はじめに】慢性呼吸不全患者に多い労作時呼吸困難は, 体動, 運動を敬遠させ, 循環系の機能低下, 呼吸筋, 四肢筋の筋力低下を招き, 呼吸困難を増悪させ, ADLやQOLの低下も招く. 近年は慢性呼吸不全患者のADLやQOLについての重要性が認識されている. JonesらのThe St.George's Hospital Respiratory Questionnaire(以下SGRQ)は慢性呼吸器疾患の健康関連QOL評価(以下HRQL)として使用されている. 今回我々はHRQLと肺機能, 全身持久力, %標準体重(以下%IBW), ADL障害との関係について検討した. 【対象, 方法】対象は慢性呼吸不全患者15名(肺気腫10名, 気管支喘息3名, 陳旧性肺結核1名, 硅肺1名)である. 性別は男性10名, 女性5名である. 年齢は平均71.3±12.6歳であった. 肺機能は%肺活量(以下%VC)平均64.3±24.3%, 一秒率(以下FEV1.0%)平均45.0±12.2%であった. 全身持久力の評価は, ランプ負荷(10watts3分その後1分おきに15watts増加)を用いた運動負荷試験を行い, その時の最大負荷強度を指標とした. 運動時低酸素血症は上述の試験前の安静時及び試験中に測定した経皮的動脈血酸素飽和度(以下SpO2)の変化率を, SpO2変化率=(安静時SpO2-最低値SpO2)/安静時SpO2×100から求めた. 下肢筋力は竹井機器製微小筋力測定器で両側の膝関節最大等尺性伸展筋力を3回測定し, 両側の最大値を平均し体重で除した値を用いた. ADLは千住らのADL評価表を使用し, 呼吸困難度はFletcher, Hugh-Jones分類(以下H-J)を用いた. 【結果】SGRQの平均値は51.7±16.6点であった. %IBwは平均92.6±17.4%, 最大負荷強度は平均48.4±43.0watts, SpO2変化率は平均6.0±4.7%, 膝伸展筋力は0.5±0.1kg/wt.であった. H-Jは, 2が2名, 3が9名, 4が2名, 5が2名であった. ADLは平均66.4±20.2点であった. SGRQと最大負荷強度(r=-0.66, P<0.01), H-J(r=0.765, P<0.001), ADL(r=-0.758, P<0.001)の間には有意な相関関係が認められた. しかしSGRQと%vC, FEV1.0%, %IBW, SpO2変化率, 膝伸展筋力との間にはいずれも相関はみられなかった. 【考察】慢性呼吸不全患者のHRQLに影響を与える因子として呼吸困難度, 精神心理的要因, 肺機能, 全身持久力, 栄養状態, ADL等の因子が関与しているとの報告がある. 今回の結果では, HRQLは全身持久力の指標として用いた最大負荷強度以外の生理学的な指標である肺機能, 栄養障害, 筋力, SpO2変化率とは相関がみられず, 呼吸困難度やADL障害と強い相関がみられた. また, 最大負荷強度とHRQLの相関関係は, 呼吸困難度やADL障害の相関係数に比べ低い値を示した. これらの結果より, 慢性呼吸不全患者のHRQLは, 生理学的な因子よりむしろ生活場面での呼吸困難感やADL障害に強く影響を受けるものと考えられた.
ISSN:0289-3770