これからの健康管理システムの方向性

社会の流動化に伴ない, 雇用という企業の組織基盤がぐらつく中, 企業を単位として行われてきた我国の健康管理システムの合理性が問われつつある. それに加え, 急速にもたらされたIT化の負の側面であるプライバシーの問題が影を落としている. 個人情報保護へ十分配慮をした上で, 健康情報をより有効利用しうる, できる限り現状に即したシステムの方向性を探るのが, 今回のワークショップの狙いである. 変化の激しい昨今, 現行の法準拠型の健康管理システムでは対応困難であることは誰もが感じている. 社会の流動化のスピードは我々の予想を遥かに超えており, 率直な感想として, 多くの面で問題のない健康管理システム...

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Published in産業衛生学雑誌 Vol. 47; no. 2; p. 84
Main Authors 斉藤政彦, 石山珠江, 藤垣直英, 江嵜高史, 鈴木美恵子, 武藤繁貴
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本産業衛生学会 01.03.2005
公益社団法人日本産業衛生学会
Japan Society for Occupational Health
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ISSN1341-0725

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Summary:社会の流動化に伴ない, 雇用という企業の組織基盤がぐらつく中, 企業を単位として行われてきた我国の健康管理システムの合理性が問われつつある. それに加え, 急速にもたらされたIT化の負の側面であるプライバシーの問題が影を落としている. 個人情報保護へ十分配慮をした上で, 健康情報をより有効利用しうる, できる限り現状に即したシステムの方向性を探るのが, 今回のワークショップの狙いである. 変化の激しい昨今, 現行の法準拠型の健康管理システムでは対応困難であることは誰もが感じている. 社会の流動化のスピードは我々の予想を遥かに超えており, 率直な感想として, 多くの面で問題のない健康管理システムの確立は容易でない. そんな中, 向かうべき方向性の1つとして, 個人の諸条件を考慮に入れた健診項目の選択と, それにきめ細かい保健指導を加えたテーラーメード対応が考えられる. このような健康情報が個人のものであるという前提から, 個人管理へ向けての大きな潮流の中, 我々は産業保健という立場から, 職場という組織集団を対象としていることを忘れてはならない. 個人情報保護法案の成立, 発布に伴ない, 健康診断へ向けられる目が厳しくなってきている. このまま傍観していると, 健康管理システムが我々から遠い存在となり, ひいては産業衛生活動そのものが萎縮してしまうことが懸念される. 今回のワークショップを発展させ, あるべき健康管理システムの創生に積極的に関与し, 提案していくことが望まれる. 4人の演者の発表に引き続いて行われた討論の中で, エヴィデンスを創る必要性について議論が大きく展開された点は特筆に価する. 健康管理システムを考える際にその必要性や有効性の有無を学術的に評価することは, 産業衛生学会として非常に重要な視点である. 我々が自信を持ってシステム創りに貢献できるように学術的な実証を得るというのが, まず我々がとるべき方向性ではなかろうか.
ISSN:1341-0725