11. 平衡機能の加齢変化
平衡機能の加齢による変化.特性を明らかにしておくことは, 種々の疾患におけるリハビリテーション治療の面で, 正常からの逸脱部分を区分する上で重要である. 22歳から95歳までの健常な男子143例について, 重心移動計を用いていくつかの課題で平衡機能の加齢的変化を検討した. 両爪先と踵を密着して起立するロンベルグ姿勢で開眼20秒の重心移動距離は20歳代で約200mm, 閉眼で約350mm, 80歳以上では前者は450mm, 後者は620mmとなり, 加齢とともに移動量の増加と分散の拡大がみられた. 立位開眼で最大前傾.後傾を行なうと, 支持基底面の縦軸のうち, 20歳代は58%, 80歳代は22...
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Published in | リハビリテーション医学 Vol. 20; no. 5; pp. 328 - 329 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本リハビリテーション医学会
18.09.1983
社団法人日本リハビリテーション医学会 The Japanese Association of Rehabilitation Medicine |
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ISSN | 0034-351X |
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Summary: | 平衡機能の加齢による変化.特性を明らかにしておくことは, 種々の疾患におけるリハビリテーション治療の面で, 正常からの逸脱部分を区分する上で重要である. 22歳から95歳までの健常な男子143例について, 重心移動計を用いていくつかの課題で平衡機能の加齢的変化を検討した. 両爪先と踵を密着して起立するロンベルグ姿勢で開眼20秒の重心移動距離は20歳代で約200mm, 閉眼で約350mm, 80歳以上では前者は450mm, 後者は620mmとなり, 加齢とともに移動量の増加と分散の拡大がみられた. 立位開眼で最大前傾.後傾を行なうと, 支持基底面の縦軸のうち, 20歳代は58%, 80歳代は22%の重心移動範囲で立位保持が可能であり, 加齢による範囲の狭少が明らかであった. 部分的に前傾.後傾を行ない, そこでの重心の累積移動距離と面積を測定すると, 両者とも高齢者ほど高値となった. 開眼片足立ちの持続時間を測定すると60歳以下では全例15秒以上の持続が可能であったが, 70歳以上では持続時間の短縮, 片足立ち持続時間と前傾.後傾による重心移動範囲との間には高い関連があり, 片足立ち持続時間の測定が平衡機能をかなり反映するものであった. 加齢によって重心の動揺は増加するが, とくに70歳以後に著明となった. 高齢者はこれに対して運動量の減少, 運動速度の遅延, 支持基底面の拡大を計り, 内外環境の変化に対応するものと考える. 質問 東北厚生年金病院 杉山 尚: 現象としてはは, その通りですが(加齢により微調整能力が衰えるという), その原因として, 加齢による何の障害によるかについて, 先生の一応のsuspectをお洩らし下さい. 中枢性要因(例えば加齢によるmicrothrombosisとか視力障害とか)か末梢性要因(例えば筋緊張アンバランスとか, 加齢による筋力低下ないし, そのアンバランスとか)か, などについての推察などについて伺いたい. 答 斎藤 宏: 平衡機能の加齢による変化に最も関与しているのは末梢からのフィードバックを含めた中枢神経系の制御によるものと考える. (高橋先生の質問に対して) 答 斎藤 宏: 筋力低下が一元的な要因とは考えられない. |
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ISSN: | 0034-351X |