A-36.歯周疾患患者唾液中のシュウ酸量について

生体内において, シュウ酸は炭水化物やタンパク質の終末代謝産生として尿中に排泄される. 排泄されたシュウ酸は, 尿中のカルシウムと結合してシュウ酸カルシウムを形成し, これが尿路結石の原因となると考えられている. しかしながら, シュウ酸と歯周疾患との関係についての報告は見当らない. 最近, 堀川らは, カラムスイッチング法とカルボン酸に特異的な呈色反応を組み合せた高速液体クロマトグラフィーを用いるシュウ酸定量法を開発した. この方法により唾液中のシュウ酸量を測定したところ, 試料の前処理が非常に簡単であり, 回収率が92%と良く, また0.5nmolから250nmolまで直線関係が得られた....

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Published in日本歯周病学会会誌 Vol. 26; no. 3; p. 613
Main Authors 榊原鋭郎, 大森恒, 大野友三, 渡辺洋, 伊藤振本, 桜井章雄, 本多隆保, 中静正
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本歯周病学会 28.09.1984
特定非営利活動法人日本歯周病学会
The Japanese Society of Periodontology
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ISSN0385-0110

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Summary:生体内において, シュウ酸は炭水化物やタンパク質の終末代謝産生として尿中に排泄される. 排泄されたシュウ酸は, 尿中のカルシウムと結合してシュウ酸カルシウムを形成し, これが尿路結石の原因となると考えられている. しかしながら, シュウ酸と歯周疾患との関係についての報告は見当らない. 最近, 堀川らは, カラムスイッチング法とカルボン酸に特異的な呈色反応を組み合せた高速液体クロマトグラフィーを用いるシュウ酸定量法を開発した. この方法により唾液中のシュウ酸量を測定したところ, 試料の前処理が非常に簡単であり, 回収率が92%と良く, また0.5nmolから250nmolまで直線関係が得られた. そこで私どもは, この方法により歯周の健康者と疾患者より採取した唾液中のシュウ酸量を測定した. その結果, 1)唾液中のシュウ酸量は, 歯周健康群では平均2.67±0.56nmo1/ml濾過唾液, 歯周疾患群では平均10.99±10.47nmol/ml濾過唾液であり, 疾患群の方が健康群より約3.7倍高い値を示した. 2)歯垢指数(p<0.01), 歯石指数(p<0.01), 歯肉炎指数(p<0.05), ポケットの深さ(p<0.05), 出血指数(p<0.001)および歯槽骨の吸収度(p<0.001)との間にそれぞれ有意な相関性が認められた. 3)出血のない群では平均3.67±1.23nmol/ml濾過唾液, 出血のある群では平均12.37±11.91nmol/ml濾過唾液であり, 出血のある群は約3.7倍高い値を示し, 二群間の差の検定によって危険率1%で有意差が認められた. 以上の事から歯周疾患とシュウ酸とは何らかの関連があることが示唆されました. 〔追加〕(愛院大歯)中静正 歯石にもシュウ酸が多いことはすでに分析しているが, 次の学会に発表したいと思っている.
ISSN:0385-0110