歯肉血流量の変化におよぼす各種刺激因子の解析
[目的]外傷性咬合における歯周組織の反応は, 歯根膜組織の圧迫による血管損傷や虚血や硝子化変性が起こり, 加わる力の大きさにより骨吸収や歯根膜組織の壊死を生じさせる. その咬合力は, 歯周疾患の共存下では歯周組織の破壊を助長させることは周知のことである. 一方, 歯肉は, 過剰な機能圧を受けた環境下においても, 粘膜組織からの血液供給を十分受け, 確保されることから影響が少ないと言われている. しかしながら, 外傷性咬合や食片圧入の影響を受けた歯周組織の環境の変化は, 歯肉の微小循環に何らかの応答や変動をもたらすものと推測される. すなわち, 過剰な機能圧は, 歯肉にうっ血や充血などの微少循環...
Saved in:
Published in | 日本歯周病学会会誌 Vol. 45; no. suppl-2; p. 139 |
---|---|
Main Authors | , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本歯周病学会
05.04.2003
|
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0385-0110 |
Cover
Summary: | [目的]外傷性咬合における歯周組織の反応は, 歯根膜組織の圧迫による血管損傷や虚血や硝子化変性が起こり, 加わる力の大きさにより骨吸収や歯根膜組織の壊死を生じさせる. その咬合力は, 歯周疾患の共存下では歯周組織の破壊を助長させることは周知のことである. 一方, 歯肉は, 過剰な機能圧を受けた環境下においても, 粘膜組織からの血液供給を十分受け, 確保されることから影響が少ないと言われている. しかしながら, 外傷性咬合や食片圧入の影響を受けた歯周組織の環境の変化は, 歯肉の微小循環に何らかの応答や変動をもたらすものと推測される. すなわち, 過剰な機能圧は, 歯肉にうっ血や充血などの微少循環変化を生じさせ, 為害作用を及ぼすものと考えられる. そこで, 演者らは, 過剰な機能圧を受けた歯肉の微少循環に着目し, 咬合圧がおよぼす歯肉血流量の変化を明らかすることを目的に, 継続的に測定可能なレーザードップラー血流計を用いて検討を行った. [材料および方法]1. 被験者および測定部位 被験者は, 全身的疾患の既往のない臨床的健康歯肉を有する5名(男性4名, 女性1名, 平均30歳)で, 上顎左側中切歯と側切歯の辺縁歯肉を結んだ歯間乳頭部直下の歯肉の厚径を計測し, 同部歯肉における血流量を測定した. 2. 測定装置 歯肉血流量の測定は, 非接触型レーザードップラー血流計(日本光電社製, 電磁血流計)を用いた. レーザープローブによる測定には, 固定用ステントを作製して行った. 3. 刺激(負荷)試験の測定方法1)咬合圧 咬合圧の刺激(負荷)試験は, 咬合力計(日本光電社製, 咬合力指示計)を用いて1kg, 5kgの負荷を上顎左側中切歯と側切歯に一定時間与え血流の変化を測定した. 2)側方圧 側方圧の刺激(負荷)試験は, コンタクトゲージ50, 110μm(GC社製)を上顎左側中切歯と側切歯間に一定時間挿入し血流の変化を測定した. [結果および考察]各々被験者の咬頭嵌合位における咬合圧は, 計測部位での血流量に著明な影響を及ぼさなかった. しかしながら, 本実験の結果, 咬合圧が咬合干渉を想定した刺激試験において, 血流量は著明に減少した. さらに, 咬合圧を1kgから5kgに増加させても血流の減少に大きな変化は認められなかった. 刺激解除後には, 一時的に血流の増加を認めた. また, コンタクトゲージを用いた側方圧も歯肉血流量に影響を与えることが示唆された. この結果は, 歯肉組織が歯根膜組織同様, 虚血状態に陥りその後に再還流を起こすことを示唆するものと考えられた. 今後, 詳細な検索を行い歯肉血流量の変化が歯肉形態をはじめ, 歯周疾患の病態に及ぼす影響について検討する必要があるものと考えられた. |
---|---|
ISSN: | 0385-0110 |