橋本病130症例の臨床経過の検討

「要約」橋本病の臨床経過を検討した. 130例(男性2例, 女性128例)を, 過去の診療録からretrospectiveに解析した. 橋本病の診断は, びまん性甲状腺腫の存在と甲状腺自己抗体(サイロイドテスト, マイクロゾームテスト)陽性に基づいて行われた. 観察期間中に, 130例中44例では機能低下に陥り, その44例中37例では甲状腺ホルモン剤による補充療法が行われた. 一方, 残りの86例は機能正常を維持した. 130例中13例では, 血清TSH濃度が測定感度以下に低下した. このようにTSHが測定感度以下に抑制される現象を, “TSH suppression”と定義した. 13例中...

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Published in日本未病システム学会雑誌 Vol. 11; no. 2; pp. 260 - 264
Main Authors 田中正巳, 大村豪
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本未病システム学会 2005
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ISSN1347-5541

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Summary:「要約」橋本病の臨床経過を検討した. 130例(男性2例, 女性128例)を, 過去の診療録からretrospectiveに解析した. 橋本病の診断は, びまん性甲状腺腫の存在と甲状腺自己抗体(サイロイドテスト, マイクロゾームテスト)陽性に基づいて行われた. 観察期間中に, 130例中44例では機能低下に陥り, その44例中37例では甲状腺ホルモン剤による補充療法が行われた. 一方, 残りの86例は機能正常を維持した. 130例中13例では, 血清TSH濃度が測定感度以下に低下した. このようにTSHが測定感度以下に抑制される現象を, “TSH suppression”と定義した. 13例中12例では, “TSH suppression”は一過性であった. “TSH suppression”後, 8例は甲状腺機能正常に回復した. 残りの4例は顕性の機能低下に陥り, 補充療法が開始された. 13例中1例では“TSH suppression”が持続し, バセドウ病を発症した. 木研究では, 130例の橋本病症例中37例, すなわち, わずか28%の症例でしか補充療法を必要としなかったことが示された. また, “TSH suppression”が10%の橋本病症例で観察され, “TSH suppression”がみられたら, その後TSHが上昇する可能性が高いことが示された. 橋本病の経過観察中に“TSH suppression”が観察された場合には, 特に慎重に甲状腺機能を検査する必要がある. そして, 甲状腺機能'正常の橋木病は“甲状腺機能異常症未病”としてとらえ, 慎重に経過を追う必要がある. 過剰な治療を避けると同時に, 治療が必要な症例を見逃さないことが重要であり, そのためにはTSHの定期的な測定が大切である.
ISSN:1347-5541