アイヌ民族が伝承するオオウバユリとその保存食品の栄養成分
狩猟民族といわれるアイヌ民族であるが, 日常に用いる多くの食料を食用植物の採集によって確保してきた1). 多くの野草は季節の順に消費されるが, 大量に採取されるものについては越冬用, もしくは飢饉に備えて貯蔵が行われた2). オオウバユリはそうした貯蔵される食料の1つであった. オオウバユリとは, 本州中部以北, 北海道, 南千島, 樺太の落葉樹林に生えるユリ科ウバユリ属の多年草である3). アイヌ民族はこの鱗茎をデンプンとオオウバユリ盤という食品に加工し貯蔵してきた. これらの加工法にはいくつかの方法があり4~6), その1つにデンプン採取後のオオウバユリ鱗茎の繊維質を発酵させてからドーナッ...
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Published in | 栄養学雑誌 Vol. 62; no. 5; pp. 303 - 306 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本栄養改善学会
01.10.2004
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ISSN | 0021-5147 |
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Summary: | 狩猟民族といわれるアイヌ民族であるが, 日常に用いる多くの食料を食用植物の採集によって確保してきた1). 多くの野草は季節の順に消費されるが, 大量に採取されるものについては越冬用, もしくは飢饉に備えて貯蔵が行われた2). オオウバユリはそうした貯蔵される食料の1つであった. オオウバユリとは, 本州中部以北, 北海道, 南千島, 樺太の落葉樹林に生えるユリ科ウバユリ属の多年草である3). アイヌ民族はこの鱗茎をデンプンとオオウバユリ盤という食品に加工し貯蔵してきた. これらの加工法にはいくつかの方法があり4~6), その1つにデンプン採取後のオオウバユリ鱗茎の繊維質を発酵させてからドーナッツ状に乾燥させて, オオウバユリ盤を作成する方法があった. これはアイヌ語でオントゥレプなどと呼ばれている. しかし, 栄養成分についての報告は少ない. そこで本報告はオオウバユリからデンプンとオントゥレプを調製し, これらの水分, たんぱく質, 脂質, 炭水化物, 灰分を分析し, アイヌ民族におけるオオウバユリの利用について検討した. |
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ISSN: | 0021-5147 |