Helicobacter pylori感染と胃癌の発生

H. pyloori感染と胃癌との関連性については疫学研究, スナネズミを用いた発癌モデル実験および除菌介入試験などの多くの研究により現在その進展がみられている. H. pyloori菌の慢性持続感染により胃粘膜は表層性胃炎から長期の経過をたどり萎縮性胃炎, さらに萎縮粘膜の一部に環境因子や宿主の遺伝的要因などが加わり腸上皮化生粘膜へと導かれ, これを背景に胃癌が発生する. このようなH. pylori感染による形態学的変化とともに機能面での胃酸分泌の低下が好発癌状態と考えられている. Helicobacter pylori (H. pylori)感染と胃癌との関連性については疫学的研究から始...

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Published in川崎医学会誌 Vol. 31; no. 3; pp. 113 - 119
Main Authors 鎌田智有, 楠裕明, 杉生訓昭, 田中亜紀, 垂水研一, 古賀秀樹, 武田昌治, 本多啓介, 畠二郎, 春間賢
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 川崎医学会 2005
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ISSN0386-5924

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Summary:H. pyloori感染と胃癌との関連性については疫学研究, スナネズミを用いた発癌モデル実験および除菌介入試験などの多くの研究により現在その進展がみられている. H. pyloori菌の慢性持続感染により胃粘膜は表層性胃炎から長期の経過をたどり萎縮性胃炎, さらに萎縮粘膜の一部に環境因子や宿主の遺伝的要因などが加わり腸上皮化生粘膜へと導かれ, これを背景に胃癌が発生する. このようなH. pylori感染による形態学的変化とともに機能面での胃酸分泌の低下が好発癌状態と考えられている. Helicobacter pylori (H. pylori)感染と胃癌との関連性については疫学的研究から始まり, スナネズミなどを用いた実験動物における胃癌の発生, ヒトにおけるH. pylori感染群からの胃癌発生の前向き研究および除菌介入試験による胃癌発生の予防の可能性などの多くの研究結果が報告されている. 本邦では約6000万人がH. pyloriに感染していると推定されているが, 胃潰瘍, 十二指腸潰瘍, 胃癌などの局在性病変を発症する感染者はそのごく一部であり, すべてのH. pylori感染者病変の発症とならないのも事実である.
ISSN:0386-5924