殺菌剤ベンチアバリカルブイソプロピルの開発

「はじめに」卵菌類に属する植物病原菌によって引き起こされる疫病やべと病は, 古くから世界的に農作物の収量や品質に影響を及ぼす最重要病害として位置付けられてきた. 特に1845~1846年にアイルランドにおいて主食としていたジャガイモに疫病が大発生し, 100万人の餓死者が出るとともにアメリカ大陸への移民に繋がったことは, 教科書にも記載されている有名な話である. 疫病やべと病は蔓延力が強く, 実場面上, 予防散布だけでは防除が追いつかない場合もあり, 治療効果を併せ持つ薬剤が求められている. 一方, 現在の農薬は, 人畜や水生生物に対する安全性だけでなく, 環境への投下薬量の低減, 天敵等の有...

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Published inJournal of Pesticide Science Vol. 35; no. 4; pp. 501 - 507
Main Authors 境潤悦, 三浦一郎, 柴田卓, 米倉範久, 日吉英孝, 高垣真喜一, 永山孝三
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本農薬学会 2010
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ISSN1348-589X

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Summary:「はじめに」卵菌類に属する植物病原菌によって引き起こされる疫病やべと病は, 古くから世界的に農作物の収量や品質に影響を及ぼす最重要病害として位置付けられてきた. 特に1845~1846年にアイルランドにおいて主食としていたジャガイモに疫病が大発生し, 100万人の餓死者が出るとともにアメリカ大陸への移民に繋がったことは, 教科書にも記載されている有名な話である. 疫病やべと病は蔓延力が強く, 実場面上, 予防散布だけでは防除が追いつかない場合もあり, 治療効果を併せ持つ薬剤が求められている. 一方, 現在の農薬は, 人畜や水生生物に対する安全性だけでなく, 環境への投下薬量の低減, 天敵等の有用生物に対する安全性が求められ, より低薬量で効果を示し, かつ選択性の高い薬剤の開発が望まれている. ベンチアバリカルブイソプロピルは, アミノ酸アミドカーバメート系の新規殺菌剤であり, 卵菌類に属する植物病原菌によって引き起こされる各種疫病・べと病に活性を示し, 優れた予防効果と治療効果を発揮する選択性の高い殺菌剤である1-7).
ISSN:1348-589X