貧困の世代的再生産と子育て ある母・子のライフヒストリーからの考察

子育て家族の経済基盤の二極化の進行のなかで,子育ての実態はいかなる現況にあるのか。本稿では,より困難が集約されている家族の現実を考察するため, 貧困の世代的再生産が把握される母と子のライフヒストリーをもとに,いかなる政策対応が求められるのかを検討した。分析からは,子ども期の貧困が若者期の貧困化に直結し,母子家族の貧困—女性の貧困へと分かち難く連なる慢性的貧困が確認された。子ども期の貧困の持続的な影響力は,貧困化と孤立化の連鎖により,生活基盤に加えて家族の形態も流動化させ,解体された家族は社会的排除のなかに置かれていた。子どもの貧困克服には,親世代における富の不平等に積極的に介入し,教育・福祉・...

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Published in家族社会学研究 Vol. 21; no. 1; pp. 45 - 56
Main Author 湯澤, 直美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本家族社会学会 30.04.2009
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ISSN0916-328X
1883-9290
DOI10.4234/jjoffamilysociology.21.45

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Summary:子育て家族の経済基盤の二極化の進行のなかで,子育ての実態はいかなる現況にあるのか。本稿では,より困難が集約されている家族の現実を考察するため, 貧困の世代的再生産が把握される母と子のライフヒストリーをもとに,いかなる政策対応が求められるのかを検討した。分析からは,子ども期の貧困が若者期の貧困化に直結し,母子家族の貧困—女性の貧困へと分かち難く連なる慢性的貧困が確認された。子ども期の貧困の持続的な影響力は,貧困化と孤立化の連鎖により,生活基盤に加えて家族の形態も流動化させ,解体された家族は社会的排除のなかに置かれていた。子どもの貧困克服には,親世代における富の不平等に積極的に介入し,教育・福祉・医療・住宅・労働など包括的な支援システムが必要である。加えて,貧困リスクのなかで生きる子どもへのソーシャルワークによる子どもの孤立化の防止と,社会的包摂に向けたエンパワーメントの視点が必要であることを提言した。
ISSN:0916-328X
1883-9290
DOI:10.4234/jjoffamilysociology.21.45