Vater乳頭部領域の超音波診断

[症例]70歳女性 [既往歴]高血圧症 [経過]2011年3月中旬より出現した心窩部不快感を主訴として近医を受診。血液検査にて肝胆道系酵素の上昇(GOT/GPT 82/119 IU/l、ALP/γGTP 1749/860 IU/l)を認め、当院に紹介された。腹部超音波検査にて総胆管下部に腫瘤性病変が指摘され、精査目的にて入院。CT、MRCP、上部内視鏡検査、ERCP等の検査を施行した。遠隔転移は認められず、外科的治療適応と判断され 2011年4月13日幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(PPPD)を施行された。[術前エコー所見] 総胆管は上部から下部まで広範囲に拡張し、下部末端付近に約23 x 17...

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Published inNihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 60; p. 89
Main Authors カラガン 徳代, 寺島 茂, 岩本 洋, 黒石 正子, 関戸 康友, 高畑  武司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE 2011
一般社団法人 日本農村医学会
Subjects
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.60.0.89.0

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Summary:[症例]70歳女性 [既往歴]高血圧症 [経過]2011年3月中旬より出現した心窩部不快感を主訴として近医を受診。血液検査にて肝胆道系酵素の上昇(GOT/GPT 82/119 IU/l、ALP/γGTP 1749/860 IU/l)を認め、当院に紹介された。腹部超音波検査にて総胆管下部に腫瘤性病変が指摘され、精査目的にて入院。CT、MRCP、上部内視鏡検査、ERCP等の検査を施行した。遠隔転移は認められず、外科的治療適応と判断され 2011年4月13日幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(PPPD)を施行された。[術前エコー所見] 総胆管は上部から下部まで広範囲に拡張し、下部末端付近に約23 x 17 mm大の境界明瞭な腫瘤性病変が認められた。腫瘤内部エコーは肝実質とほぼ同等でやや不均質に観察された。肝内胆管は軽度拡張し膵管は数珠状の拡張がみられたが、膵臓に腫瘤性病変は認められず、胆嚢の明らかな腫大はみられなかった。[切除組織病理所見] Vater乳頭部に27x25mmの腫瘤を形成する腫瘍で、組織学的には乳頭状または不規則な腺管構造を呈する高分化型腺癌であった。oddi括約筋を超えて十二指腸粘膜および粘膜下に進展しており、わずかに十二指腸固有筋層より下への浸潤が確認された。膵実質への浸潤は明らかではなく、腫瘍分量のほとんどは十二指腸筋層より上に位置していた。[考察]本症例は体位変換を用いて胆嚢の音響窓を有効に利用し、総胆管下部末端の腫瘤像の存在診断が可能となった。術前に推察された腫瘤の局在は総胆管下部末端とは乖離していたが、探査子の走査法を工夫すること、腫瘤像周囲にみられる腸管ガスの方向(流れ)を考慮することにより、Vater乳頭部領域の病変の局在をより高い精度で推定できる可能性が示唆された。
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.60.0.89.0