混合病棟における転倒・転落の看護師の認識の統一

はじめに わが国の高齢化は著しく、2015年には高齢化率25%を超え、人口の4人に一人は高齢者になると言われている。高齢者が身体能力を低下させずに入院生活を送るには、骨折などの身体的損傷をおこす転倒転落(以下転倒とする)事故を起こさないことが重要である。当病棟は、眩暈や起立性低血圧の高齢者患者の入院が多く、実際に転倒事故が報告されている。患者の安全を守り、転倒事故を起こさないために、転倒・転落インシデントレポート内容を検討し看護の振り返りをもとに、スタッフの転倒・転落に対する認識の統一を図ることを目的として、フローシート作成に取り組んだので報告する。 _I_ 研究目的 1. 転倒・転落の分析を...

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Published inNihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 56; p. 152
Main Author 小板 昌子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE 2007
一般社団法人 日本農村医学会
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.56.0.152.0

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Abstract はじめに わが国の高齢化は著しく、2015年には高齢化率25%を超え、人口の4人に一人は高齢者になると言われている。高齢者が身体能力を低下させずに入院生活を送るには、骨折などの身体的損傷をおこす転倒転落(以下転倒とする)事故を起こさないことが重要である。当病棟は、眩暈や起立性低血圧の高齢者患者の入院が多く、実際に転倒事故が報告されている。患者の安全を守り、転倒事故を起こさないために、転倒・転落インシデントレポート内容を検討し看護の振り返りをもとに、スタッフの転倒・転落に対する認識の統一を図ることを目的として、フローシート作成に取り組んだので報告する。 _I_ 研究目的 1. 転倒・転落の分析をする。 2. 転倒・転落に対するスタッフの認識の統一 _II_ 研究方法 1.平成17年4月~12月転倒・転落インシデントの分類_丸1_疾患別_丸2_年齢_丸3_時間_丸4_疾患_丸5_場所_丸6_誘因 2.分類結果に基づき転倒・転落の分析を行う 【倫理的配慮】 インシデントレポートの患者名、看護師名は無記名とした。 _III_ 結果 1.年齢・性別:男性12人(74.3±13.5)・女性18人(78.4±5.6) 2.時間:深夜帯の朝方の転倒が多い。 3.場所:ベッドからの転落・ベッドサイドでの転倒が75%を占める。 4.疾患:腎臓疾患(58%)・眼科疾患(18%)・耳鼻科疾患(12%)病棟特有の疾患が多い。 5.誘因:排泄行為(45%)・環境に関すること(29%)であった。 6.転倒予防フローチャートの作成、患者個々のフローシートに綴じる事により、共有化した。 7.インシデント内容(事例の紹介) 1.93歳脳梗塞・認知症あり、隣の部屋にいたら物音がしたので訪室すると向きを反対にして、床に臥床しているところを発見。4点柵だったが部屋移動から3点柵になっていた。 2.74歳肺線維症・認知症なし、トイレに起き上がり低酸素で転倒する。2点柵だった。入院時ナースコール指導したが自分でできると思った。 3.78歳心不全・認知症あり、昼食のためデイルームに車椅子移動。自分で部屋に戻りベッドに移動しようとして座りこんでしまったところを発見。自ら移動することがなかった為、安全ベルトをしてなかった。 _V_考察  鈴木2)は「転倒の8割は予測可能である。あらかじめ転倒の危険性を予測し、事前に転倒ケアを実践していれば確実に予防できる。それには、最初に転倒リスクアセスメントを行うことが重要である。次に転倒ハイリスク患者に対する予防的看護ケア介入として統一したケアプランを病棟全体にすることで、統一した転倒ケアで取り組むことができる。」と述べている。排泄行為、環境整備・食事や更衣など、このぐらいなら自分で出来るといった場面での転倒・転落がみられ、患者の日常生活場面での姿勢やバランスなど、患者の全体を捉えた援助が必要となる。 入院という環境の変化から患者は、これまで自分で出来た生活行動を看護者にゆだねることとなる。特に排泄行動に関しては、遠慮なく看護師へ依頼してもらうために、その都度温かい笑顔と、ゆとりを持った態度で患者と接することが大切である。 転倒予防には、いかに早く患者の状態を把握し、アセスメントするかが重要になり、看護師間の伝達方法と情報の共有化を考えなければならない。 転倒予防フローシートを作成し、チャート化した対策を看護間で共有する事で、スタッフの早期予防策への認識が向上した。そのことは患者の安全を守ることに繋がったと感じた。 今後の統一したリスク分析と患者個々に合った予防対策を行っていきたい。 _VI_結論 1. 患者の状態をいち早く把握し、援助計画を立てる。 2. 看護師間の情報の共有化のためのフローシートを活用する。
AbstractList はじめに わが国の高齢化は著しく、2015年には高齢化率25%を超え、人口の4人に一人は高齢者になると言われている。高齢者が身体能力を低下させずに入院生活を送るには、骨折などの身体的損傷をおこす転倒転落(以下転倒とする)事故を起こさないことが重要である。当病棟は、眩暈や起立性低血圧の高齢者患者の入院が多く、実際に転倒事故が報告されている。患者の安全を守り、転倒事故を起こさないために、転倒・転落インシデントレポート内容を検討し看護の振り返りをもとに、スタッフの転倒・転落に対する認識の統一を図ることを目的として、フローシート作成に取り組んだので報告する。 _I_ 研究目的 1. 転倒・転落の分析をする。 2. 転倒・転落に対するスタッフの認識の統一 _II_ 研究方法 1.平成17年4月~12月転倒・転落インシデントの分類_丸1_疾患別_丸2_年齢_丸3_時間_丸4_疾患_丸5_場所_丸6_誘因 2.分類結果に基づき転倒・転落の分析を行う 【倫理的配慮】 インシデントレポートの患者名、看護師名は無記名とした。 _III_ 結果 1.年齢・性別:男性12人(74.3±13.5)・女性18人(78.4±5.6) 2.時間:深夜帯の朝方の転倒が多い。 3.場所:ベッドからの転落・ベッドサイドでの転倒が75%を占める。 4.疾患:腎臓疾患(58%)・眼科疾患(18%)・耳鼻科疾患(12%)病棟特有の疾患が多い。 5.誘因:排泄行為(45%)・環境に関すること(29%)であった。 6.転倒予防フローチャートの作成、患者個々のフローシートに綴じる事により、共有化した。 7.インシデント内容(事例の紹介) 1.93歳脳梗塞・認知症あり、隣の部屋にいたら物音がしたので訪室すると向きを反対にして、床に臥床しているところを発見。4点柵だったが部屋移動から3点柵になっていた。 2.74歳肺線維症・認知症なし、トイレに起き上がり低酸素で転倒する。2点柵だった。入院時ナースコール指導したが自分でできると思った。 3.78歳心不全・認知症あり、昼食のためデイルームに車椅子移動。自分で部屋に戻りベッドに移動しようとして座りこんでしまったところを発見。自ら移動することがなかった為、安全ベルトをしてなかった。 _V_考察  鈴木2)は「転倒の8割は予測可能である。あらかじめ転倒の危険性を予測し、事前に転倒ケアを実践していれば確実に予防できる。それには、最初に転倒リスクアセスメントを行うことが重要である。次に転倒ハイリスク患者に対する予防的看護ケア介入として統一したケアプランを病棟全体にすることで、統一した転倒ケアで取り組むことができる。」と述べている。排泄行為、環境整備・食事や更衣など、このぐらいなら自分で出来るといった場面での転倒・転落がみられ、患者の日常生活場面での姿勢やバランスなど、患者の全体を捉えた援助が必要となる。 入院という環境の変化から患者は、これまで自分で出来た生活行動を看護者にゆだねることとなる。特に排泄行動に関しては、遠慮なく看護師へ依頼してもらうために、その都度温かい笑顔と、ゆとりを持った態度で患者と接することが大切である。 転倒予防には、いかに早く患者の状態を把握し、アセスメントするかが重要になり、看護師間の伝達方法と情報の共有化を考えなければならない。 転倒予防フローシートを作成し、チャート化した対策を看護間で共有する事で、スタッフの早期予防策への認識が向上した。そのことは患者の安全を守ることに繋がったと感じた。 今後の統一したリスク分析と患者個々に合った予防対策を行っていきたい。 _VI_結論 1. 患者の状態をいち早く把握し、援助計画を立てる。 2. 看護師間の情報の共有化のためのフローシートを活用する。
Author 小板 昌子
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