下肢装具アライメントが身体に及ぼす影響

【はじめに】私たちは、第35回理学療法士・作業療法士合同学会in熊本において、健常者ではあるがPlastic Ankle Foot Orthosis(以下、P-AFO)にトリミングラインやball joint lineの工夫を行うことで歩行時のCenter of pressure(以下、COP)の軌跡に変化を与える事を報告した。今回、当事業所御利用中の脳卒中片麻痺者において、回復期病棟入棟中に作製していた装具(大河原式AFO)では痛みを伴っており新たに装具を作製し直す機会があった。義肢装具士協力のもと、同じ大河原式AFOではあるが立位姿勢での荷重線を意識して採型してもらい、下肢装具アライメント...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2016; p. 162
Main Authors 濵田 直人, 細樅 和誠, 井川 祐樹, 浅井 洋, 堀内 信吾, 山口 泰成
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2016
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
Subjects
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2016.0_162

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Summary:【はじめに】私たちは、第35回理学療法士・作業療法士合同学会in熊本において、健常者ではあるがPlastic Ankle Foot Orthosis(以下、P-AFO)にトリミングラインやball joint lineの工夫を行うことで歩行時のCenter of pressure(以下、COP)の軌跡に変化を与える事を報告した。今回、当事業所御利用中の脳卒中片麻痺者において、回復期病棟入棟中に作製していた装具(大河原式AFO)では痛みを伴っており新たに装具を作製し直す機会があった。義肢装具士協力のもと、同じ大河原式AFOではあるが立位姿勢での荷重線を意識して採型してもらい、下肢装具アライメント等を再考し作製してもらった。今まで使用していた大河原式AFO(以下、旧AFO)と今回新たに作製した大河原式AFO(以下、新AFO)を比較・検討し、その後のリハビリにおいて歩行や生活に変化を与える事が出来たので報告する。【事例紹介】60歳代男性、脳卒中左片麻痺、要介護2。回復期病棟に5ヶ月入院(毎日9単位のリハビリ実施とのこと)された後、自宅退院され当事業所(利用時間3時間、利用定員午前10名・午後10名に対し、PT2名常勤の地域密着型通所介護施設)を週2回御利用。Br.stage:U/EⅡ~Ⅲ、FinⅡ~Ⅲ、L/EⅢ~Ⅳ、高次脳機能障害は特に認められない。両膝関節は、変形性膝関節症(X脚)が認められる。移動は、T-cane+旧AFOにて屋内自立。しかし、旧AFO装着では左第5中足骨頭・下腿外側に疼痛出現するため活動制限あり。また、麻痺側足部に著明な浮腫あり。【方法】旧AFOと同型の新AFOを作製。新AFOは、立位姿勢での荷重線を意識して採型してもらい、足関節継手の位置、装具内壁の高さ、下腿カフの角度を再考し、第1中足骨頭と第3趾先端を結んだball joint lineを設けてもらった。3mの歩行距離を設け、force plate(Zebris社製)を使用し、1歩行周期における左下肢1stepのContact time・Gait line lengthを旧AFOと新AFOで測定し、比較・検討した。また、当事業所利用開始時と新AFOを装着し週2回約8ヶ月間当事業所利用中にアプローチを行った後の、TUG・5m歩行・椅子からの立ち上がり・痛みの評価Numerical Rating Scale(以下、NRS)を比較・検討。アプローチの内容としては、Step-ex、Step-up-ex、STS-exや歩行ex、バランスex等であった。【結果】Contact time(sec):旧AFO0.92、新AFO0.83、Gait line length(mm):旧AFO234.5、 新AFO212.9。TUG(初回:28.9秒→8ヶ月後:17.2秒)、5m歩行(初回:11.2秒→8ヶ月後:7.6秒)、椅子からの立ち上がり(初回:10回/30秒→8ヶ月後16回/30秒)、NRS(初回:8/10→現在:0/10)となった。さらには、自宅内での活動機会が増え、屋外での活動範囲の拡大を認め、現在では自家用車に乗り買い物への外出、家族の車の洗車、庭木の手入れ等を行う様になった。また、足部の浮腫の著減を認め、わずかながら足関節の背屈を認める様にもなっている。【考察とまとめ】本事例においても、以前健常者で得られたような装具アライメントの違いが歩行に影響を与えた。本来、装具というのは人の動作を補助し、生活の質を向上させるものでなければならないと考える。装具の種類の名前は一緒であっても、アライメントの違いが対象者の能力を向上させる可能性と低下させる可能性両方を兼ね備えていると感じた。今後も、下肢装具アライメントが対象者に影響を与えると認識しながら、採型や動作分析・アプローチに携わっていきたい。【倫理的配慮,説明と同意】対象事例においては、本研究の趣旨を十分に説明し同意を得た上でヘルシンキ宣言の趣旨に沿った倫理的配慮を行った。
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2016.0_162