研修医の立場から

長岡中央綜合病院は新潟県の中央部に位置する病床530床の病院で、常勤医師はおよそ60名です。 私の初期研修でのローテーションは1年目には循環器・呼吸器内科3ヶ月、一般外科・麻酔科4ヶ月、腎・内分泌・血液・神経内科2ヶ月、消化器内科2ヶ月をまわり、救急科として週1回の当直(副直として)を行ないました。2年目は整形外科(選択)3ヶ月、精神科6週間、地域医療として保健所2週間、診療所(4医院)2週間、療養型病床のある栃尾郷病院2週間、小児科6週間、産婦人科6週間、放射線科2.5ヶ月、皮膚科(選択)2週間をローテーションしました。また、選択科の期間中は月に3から4回の当直を行ないました。  新研修医制...

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Published inNihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 55; p. 14
Main Author 梅田 直人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE 2006
一般社団法人 日本農村医学会
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.55.0.14.0

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Summary:長岡中央綜合病院は新潟県の中央部に位置する病床530床の病院で、常勤医師はおよそ60名です。 私の初期研修でのローテーションは1年目には循環器・呼吸器内科3ヶ月、一般外科・麻酔科4ヶ月、腎・内分泌・血液・神経内科2ヶ月、消化器内科2ヶ月をまわり、救急科として週1回の当直(副直として)を行ないました。2年目は整形外科(選択)3ヶ月、精神科6週間、地域医療として保健所2週間、診療所(4医院)2週間、療養型病床のある栃尾郷病院2週間、小児科6週間、産婦人科6週間、放射線科2.5ヶ月、皮膚科(選択)2週間をローテーションしました。また、選択科の期間中は月に3から4回の当直を行ないました。  新研修医制度の利点としては、広く診療科をまわることにより、将来自分が専門としない領域においてもある程度のfirst aidが出来るようになることがあげられると思います。実際、特に小児科は夜間・救急外来で対応に苦慮することが多いですが、たった6週間でも小児科医から直々に指導を受けることにより幾分自信をもって診療に当たれるようになりました。  また、将来の専門分野と関連する科を選択出来たことはとてもよい勉強になりました。私はアレルギー・膠原病・リウマチ内科にすすむ予定ですが、整形外科でリウマチ患者を担当し、助手として手術にも参加したことは今後リウマチの診療を行なっていく上で大きな意義があったと思います。放射線科、皮膚科も膠原病とその合併症、他疾患との鑑別において得るものが大きかったでした。  さらに、多くの分野で様々な手技を指導医の指導のもと実際に行なえたことは、臨床能力を上げる大きな力になったと思います。採血、ライン確保、胃管挿入、胸腔穿刺、腹腔穿刺、腰椎穿刺、気管内挿管、中心静脈ライン確保、骨髄穿刺の他、上部消化管内視鏡、気管支鏡、腹部超音波検査、注腸造影検査なども行なうことが出来ました。  一方、新研修医制度の欠点や、疑問点も数多く感じました。専門家として着実に育っていくストレート研修と異なり、スーパーローテーションには無駄が多いのではないかという新制度導入前から投げかけられていた疑問になかなか明確な答えが出せないこと。ローテートしている研修医が多くの手技を行ない診療に当たることは、見落としや事故などのリスクが上がることにつながると思われますが、患者の不利益と、幅広い対応能力のある医師を育てることの利益との兼ね合いが難しいことなどです。救急外来などでは常に指導医にコンサルト出来る体制にはなっていても、実際には自分の判断だけで患者を返すことも多く、緊急の疾患を見逃してしまう可能性もありました。  2年間の初期研修は自分にとっては、とても得るものが多かったと思います。ただ、より多くの手技、診療行為を研修医が行なうことは研修医にとって利益が大きい分、目の前の患者にとっては不利益を生じる可能性は高く、責任の所在の明確化やバックアップ体制の充実をいかに行なうかが、この制度を充実したものにしていくための大きな鍵になると思われました。
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.55.0.14.0