心血管疾患入院患者における入院前の活動的趣味と退院時のフレイルとの関連

【背景】 心血管疾患患者においてフレイルを呈する者は多く、入院加療の安静によって身体機能が低下する者も少なくない。したがって心血管疾患患者において退院時のフレイルのリスクを低下させる要因を検討する必要がある。地域住民を対象とした研究において、趣味がない者と比較して趣味がある者は6年間の死亡リスクが低く、3年間の要介護認定リスクが低いことが報告されている。したがって本研究の目的は、急性期心血管疾患入院患者において入院前の活動的趣味の有無と退院時のフレイルとの関連を調査することである。【方法】 本研究は、入院前に日常生活動作が自立した急性期心血管疾患患者269名を対象とした後ろ向き観察研究である。...

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Published inKyushu physical therapist Congress Vol. 2023; p. 183
Main Authors 中根 知尋, 横手 翼, 西村 天利, 古川 正一郎, 井上 修二朗
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会 2023
Kyushu Physical Therapy Association
Subjects
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ISSN2434-3889
DOI10.32298/kyushupt.2023.0_183

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Summary:【背景】 心血管疾患患者においてフレイルを呈する者は多く、入院加療の安静によって身体機能が低下する者も少なくない。したがって心血管疾患患者において退院時のフレイルのリスクを低下させる要因を検討する必要がある。地域住民を対象とした研究において、趣味がない者と比較して趣味がある者は6年間の死亡リスクが低く、3年間の要介護認定リスクが低いことが報告されている。したがって本研究の目的は、急性期心血管疾患入院患者において入院前の活動的趣味の有無と退院時のフレイルとの関連を調査することである。【方法】 本研究は、入院前に日常生活動作が自立した急性期心血管疾患患者269名を対象とした後ろ向き観察研究である。入院中に、入院前の趣味の有無とその内容を聴取した。ウォーキングや農作業などの身体活動を要する趣味がある者を活動的趣味群、映画鑑賞や手芸などの身体活動を要さない趣味がある者を非活動的趣味群、そして趣味なし群の3群に分類した。フレイルは退院直前に評価し、Japanese version of Cardiovascular Health Study基準に基づき、握力低下、歩行速度低下、疲労感、体重減少、低活動の5項目のうち、3項目以上該当をフレイル、1~2項目該当をプレフレイル、0項目をロバストと定義した。趣味3群における特徴を比較し、趣味3群とフレイルおよびその構成要素との関連をロジスティック回帰分析で調査し、オッズ比(以下、OR)と95%信頼区間(以下、95%CI)を算出した。調整因子は年齢、性別、体格指数、疾患分類、在院日数とした。統計解析は統計ソフトSTATA ver. 17を用い、有意水準を5%未満とした。【結果】 趣味3群において、年齢、性別、疾患分類、退院時のフレイルの割合、フレイルの構成要素である歩行速度低下と疲労感の該当者の割合に有意差がみられた。趣味3群におけるプレフレイル/フレイルの人数(割合)は、趣味なし群が43(61.4%)/16(22.9%)、非活動的趣味群が33(53.2%)/23(37.1%)、活動的趣味群が70(57.4%)/17(13.9%)であった。趣味なし群と比較し、非活動的趣味群はプレフレイルとフレイルのORが低いと言えなかった。活動的趣味群では、プレフレイルとフレイルのORが有意に低く、調整後も変わらなかった(OR:0.38、95%CI:0.17-0.86)。フレイルの構成要素については、活動的趣味群は趣味なし群と比較して、調整後、歩行速度低下、疲労感、低活動のORが低かった。【考察】 身体活動は、歩行速度に関わる筋力やバランス能力に良い影響がある。入院前に活動的趣味がある者は、入院前の歩行速度が良く、それが入院中に維持し、退院時のフレイルのリスクが低かった可能性がある。同様に、入院前から活動的趣味を行う体力があることが、退院時まで維持していたことも考えられる。また、入院前に活動的趣味があることは、退院後にその趣味を再開したいという気持ちによって精神的活力を高め、運動や理学療法に対する動機づけとなり、その群における疲労感と低活動のリスクが低かったと考えられる。【結論】 急性期心血管疾患入院患者において、入院前に活動的趣味がある者は、趣味がない者と比較して、退院時にフレイルを有するリスクが低かった。今後は趣味の頻度や時間、継続年数、および強度を考慮した身体活動量、入院前のフレイルなどを評価するとともに、退院後の身体機能や再入院率などの長期予後との関連を検証する必要がある。
ISSN:2434-3889
DOI:10.32298/kyushupt.2023.0_183