実習場の教育環境を整える
看護学生にとって実習は対象者とかかわる事で看護実践能力が身につき、看護観が形成されて職業意識に目覚め、学習の動機づけになる場である。当院でも実習病院として学生を受け入れているが、平成16年度より実習受け入れ校が増え、看護学生10-13人に対して指導者は1-2人で指導にあたっている。学生一人ひとりに限られた実習時間を有効にできるよう人的環境の強化の必要性を感じた。そこで学生の心境・希望を把握した上でスタッフの協力体制の現状について集合研修を行なった。その後のスタッフの意識変化について報告する。結果・考察 今回、病棟スタッフ3.4年目を対象としたのは、プリセプター経験者が多いことである。臨床では新...
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Published in | Nihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 54; p. 214 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
2005
一般社団法人 日本農村医学会 |
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 1880-1749 1880-1730 |
DOI | 10.14879/nnigss.54.0.214.0 |
Cover
Abstract | 看護学生にとって実習は対象者とかかわる事で看護実践能力が身につき、看護観が形成されて職業意識に目覚め、学習の動機づけになる場である。当院でも実習病院として学生を受け入れているが、平成16年度より実習受け入れ校が増え、看護学生10-13人に対して指導者は1-2人で指導にあたっている。学生一人ひとりに限られた実習時間を有効にできるよう人的環境の強化の必要性を感じた。そこで学生の心境・希望を把握した上でスタッフの協力体制の現状について集合研修を行なった。その後のスタッフの意識変化について報告する。結果・考察 今回、病棟スタッフ3.4年目を対象としたのは、プリセプター経験者が多いことである。臨床では新人スタッフに看護に必要な知識や技術を教え、共に成長するという過程は実習指導者と学生との関係と共通するからである。新人看護師を学生と置き換えるとイメージがつきやすいということ、また、教えることの難しさや、やりがい感につながり院内臨地実習指導養成受講へのきっかけとなり期待される次代の指導者になるのではないかと考えた。一般的には臨床でスタッフの多くは学生に対する全責任を指導者や教員が負えばいいという“他人任せ”の傾向があるが、事前のアンケート結果から看護学生は教員や指導者だけで成り立つのではなく病院スタッフ全体が関わっていかなくてはいけないと考えているものが8割と高かった。しかし、学生とのあいさつや受け持ち患者さまに対する情報交換などにおけるコミュニケーションがはかれていないスタッフが7割を占めていることがわかる。また学生が困っていると思われる場面でも声をかける事ができないものが6割を占めている。学生指導は教員や指導者だけで成り立つのではなくスタッフも関与していかなくてはいけないと感じながらも挨拶ができないなどのコミュニケーションの障害が生じている。学生のアンケートからも「挨拶をしてもらえない」「無視をされる」「忙しそうで声がかけることができない」という結果であった。スタッフの学生指導に対する思いと行動に矛盾が生じていることが明らかである。理由として(1)多忙な業務で学生に余裕がない(2)指導者・教員との目に見えない境界線がひかれてどこまで関わってよいのかがわからない(3)指導に自信がない(4)学生に関心がない(5)学生の態度が悪いということであった。このようなコミュニケーション障害が続くと学生は実習の目的を果たすことができない。実践力のある看護職を育てるために看護教育学会でも「教育と臨床の有機連携」の必要性が唱えられている。このことから(2)(3)(4)に対し指導者養成研修を受講していないスタッフに対して学生の心境や対人的特性の説明を行う集合研修を行なった。研修内容は短時間でいかに興味を引き、自分の行動の振り返りができるよう身近な体験を動画を入れビデオを作成した。その結果「学生に少し関心を持つ事ができた」「自分を振り返るきっかけとなり反省した」と答えたスタッフが2割から8割へとアップした。動画については「自分たちってあんな風なの?怖い!」など行動を見直すことができる動機づけとなったと考える。今回のこの研修をきっかけに臨床指導者とスタッフが連携を取り学生がのびのびと実習できる環境を整えることができることを期待する。おわりに臨床実習における対人関係は学生にとって計り知れない緊張を感じている。この過度な緊張が自己の能力を表出することの妨げとなってはいけない。学生を取り巻く環境や人間関係が良好に保たれ、良き後継者を育成していくためにも臨地実習指導者の役割は大きいと感じた。 |
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AbstractList | 看護学生にとって実習は対象者とかかわる事で看護実践能力が身につき、看護観が形成されて職業意識に目覚め、学習の動機づけになる場である。当院でも実習病院として学生を受け入れているが、平成16年度より実習受け入れ校が増え、看護学生10-13人に対して指導者は1-2人で指導にあたっている。学生一人ひとりに限られた実習時間を有効にできるよう人的環境の強化の必要性を感じた。そこで学生の心境・希望を把握した上でスタッフの協力体制の現状について集合研修を行なった。その後のスタッフの意識変化について報告する。結果・考察 今回、病棟スタッフ3.4年目を対象としたのは、プリセプター経験者が多いことである。臨床では新人スタッフに看護に必要な知識や技術を教え、共に成長するという過程は実習指導者と学生との関係と共通するからである。新人看護師を学生と置き換えるとイメージがつきやすいということ、また、教えることの難しさや、やりがい感につながり院内臨地実習指導養成受講へのきっかけとなり期待される次代の指導者になるのではないかと考えた。一般的には臨床でスタッフの多くは学生に対する全責任を指導者や教員が負えばいいという“他人任せ”の傾向があるが、事前のアンケート結果から看護学生は教員や指導者だけで成り立つのではなく病院スタッフ全体が関わっていかなくてはいけないと考えているものが8割と高かった。しかし、学生とのあいさつや受け持ち患者さまに対する情報交換などにおけるコミュニケーションがはかれていないスタッフが7割を占めていることがわかる。また学生が困っていると思われる場面でも声をかける事ができないものが6割を占めている。学生指導は教員や指導者だけで成り立つのではなくスタッフも関与していかなくてはいけないと感じながらも挨拶ができないなどのコミュニケーションの障害が生じている。学生のアンケートからも「挨拶をしてもらえない」「無視をされる」「忙しそうで声がかけることができない」という結果であった。スタッフの学生指導に対する思いと行動に矛盾が生じていることが明らかである。理由として(1)多忙な業務で学生に余裕がない(2)指導者・教員との目に見えない境界線がひかれてどこまで関わってよいのかがわからない(3)指導に自信がない(4)学生に関心がない(5)学生の態度が悪いということであった。このようなコミュニケーション障害が続くと学生は実習の目的を果たすことができない。実践力のある看護職を育てるために看護教育学会でも「教育と臨床の有機連携」の必要性が唱えられている。このことから(2)(3)(4)に対し指導者養成研修を受講していないスタッフに対して学生の心境や対人的特性の説明を行う集合研修を行なった。研修内容は短時間でいかに興味を引き、自分の行動の振り返りができるよう身近な体験を動画を入れビデオを作成した。その結果「学生に少し関心を持つ事ができた」「自分を振り返るきっかけとなり反省した」と答えたスタッフが2割から8割へとアップした。動画については「自分たちってあんな風なの?怖い!」など行動を見直すことができる動機づけとなったと考える。今回のこの研修をきっかけに臨床指導者とスタッフが連携を取り学生がのびのびと実習できる環境を整えることができることを期待する。おわりに臨床実習における対人関係は学生にとって計り知れない緊張を感じている。この過度な緊張が自己の能力を表出することの妨げとなってはいけない。学生を取り巻く環境や人間関係が良好に保たれ、良き後継者を育成していくためにも臨地実習指導者の役割は大きいと感じた。 |
Author | 加納 千華 日下部 亜希子 |
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DOI | 10.14879/nnigss.54.0.214.0 |
DatabaseName | CiNii Complete |
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DocumentTitleAlternate | 学生に関する集合研修後のスタッフの認識変化 |
EISSN | 1880-1730 |
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