手掌刺激が握力、手指巧緻性に及ぼす影響
【はじめに】当院では地域における医療及び文化活動の一環として毎年病院祭を開催し、第63回を迎えた。今回当科では、住民への啓発活動を目的に手運動による認知症予防への取り組みを行った。その中で参加者へ握力測定、簡易上肢機能検査(以下STEF)測定を実施し、手掌刺激後における運動機能等への影響を調査した。手掌刺激と握力の結果に若干の知見を得たのでここに報告する。 【対象・方法】対象者は病院祭で当科を訪れた健常者415名(男性140名、女性275名)、年齢4~90歳(平均年齢45.3±21.2歳)で、本研究の趣旨を説明し同意を得た。方法は対象者に予め握力測定、STEF(小球、ピン)の計測を行った後、対...
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Published in | 関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 29; p. 146 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
2010
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Subjects | |
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ISSN | 0916-9946 2187-123X |
DOI | 10.14901/ptkanbloc.29.0.146.0 |
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Summary: | 【はじめに】当院では地域における医療及び文化活動の一環として毎年病院祭を開催し、第63回を迎えた。今回当科では、住民への啓発活動を目的に手運動による認知症予防への取り組みを行った。その中で参加者へ握力測定、簡易上肢機能検査(以下STEF)測定を実施し、手掌刺激後における運動機能等への影響を調査した。手掌刺激と握力の結果に若干の知見を得たのでここに報告する。
【対象・方法】対象者は病院祭で当科を訪れた健常者415名(男性140名、女性275名)、年齢4~90歳(平均年齢45.3±21.2歳)で、本研究の趣旨を説明し同意を得た。方法は対象者に予め握力測定、STEF(小球、ピン)の計測を行った後、対象者の両側手掌へ刺激を加え、再び握力測定、STEFを実施した(刺激群とする)。また研究を行うにあたり対照群(握力37名、平均年齢28.1±7.8歳 STEF126名、平均年齢47.5±20.6歳)を用い、2回測定間の変化を比較し、本結果への効果の参考とした。その際、STEFの実施にあたっては課題が健常者には容易なため非利き手での計測を、握力は利き手での測定とした。握力は検査側上肢を体側に下垂した直立位の姿勢とし、STEF測定方法は小球6球を遠位枠内から近位枠内へ、ピン6本を近位枠内から遠位枠内への移動時間を測定した。手掌刺激部位は手掌支持の際に接触する母指球・小指球と接触機会の少ない手掌中央を2分する母指球内側縁・小指球外側縁の2方向を中枢部から末梢部に向け各5回ずつ、打腱器の柄先端を使用して行った。なお検定には対応のあるサンプルのt検定を用いた。また個人情報は、研究対象者が特定できない様に十分配慮し、研究以外の目的に使用しないこととした。
【結果】握力では対照群で差がないのに対し、刺激群では刺激前30.9±11.3kgから刺激後32.4±11.1kgへ増加が認められた(p<0.05)。またピンを用いたSTEFでは刺激群で刺激前14.2±6.5秒、刺激後が12.6±4.9秒へ、対照群では刺激前が14.1±7.5秒、非刺激後は13.1±6.9秒へと短縮し、両群で有意差を認め、群間の差は認められなかった。また小球を用いたSTEFでも群間の差は認められなかった。
【考察】感覚野・運動野の機能連関の研究において、Teraoらは、皮膚空気刺激による運動誘発電位の促通効果やその神経経路を報告している。握力において刺激前後で有意な増加が認められた要因として、皮膚刺激による感覚情報が皮質間投射線維を介して一次感覚野から一次運動野に至り、運動野の興奮性を高めたと考えられる。STEFにおいてピン・小球ともに刺激前後で差を認めなかった要因は、課題難易度が健常者には容易であり、施行時の誤差が少なく誤差調整が生じ難かったため皮膚刺激による介入効果は得られなかったと考える。多くの検討事項を要するが、今回の結果から手掌刺激による筋出力の増加が認められ、今後治療の導入としての応用の可能性が示唆された。 |
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ISSN: | 0916-9946 2187-123X |
DOI: | 10.14901/ptkanbloc.29.0.146.0 |