呼吸器感染症におけるSisomicinの臨床細菌学的研究

アミノ配糖体系薬剤Sisomicinについて臨床細菌学的検討を加え, 次の結論を得た。 1. S.aureus 13株, S. pneumoniae 5株, Enterobacteriaceae 43株, P.aeruginosa 16株, Acinetobacter 13株の臨床分離菌90株に対する本剤のin vitroでの抗菌力を調べた。供試菌の0%が0.78μg/ml以下のMIC値を, また約90%が3.13μg/ml以下のMIC値を示した。 2. 呼吸器感染症例 (中等症および重症) では, 本剤常用投与量75mg筋注の場合, 筋注後30分で最高血中濃度16.3±7.5μg/ml (8...

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Published inCHEMOTHERAPY Vol. 28; no. 1; pp. 64 - 72
Main Authors 前田, 文彦, 藤木, 哲郎, 吉田, 稔, 関, 雅彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本化学療法学会 25.01.1980
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Summary:アミノ配糖体系薬剤Sisomicinについて臨床細菌学的検討を加え, 次の結論を得た。 1. S.aureus 13株, S. pneumoniae 5株, Enterobacteriaceae 43株, P.aeruginosa 16株, Acinetobacter 13株の臨床分離菌90株に対する本剤のin vitroでの抗菌力を調べた。供試菌の0%が0.78μg/ml以下のMIC値を, また約90%が3.13μg/ml以下のMIC値を示した。 2. 呼吸器感染症例 (中等症および重症) では, 本剤常用投与量75mg筋注の場合, 筋注後30分で最高血中濃度16.3±7.5μg/ml (8症例) に達し, 半減期は約3時間であった。本剤の喀痰への移行は筋注1時間後から2時間の蓄痰中平均濃度が1.3±0.6μg/mlであり, 筋注後約4時間, 1.0μg/ml以上の濃度が維持された。本剤の12時間尿中回収率は88%であった。 3. 血中濃度, 喀痰中濃度, 供試菌に対する抗菌力の成績を参考とし, 1濃度Disc法による臨床的感受性限界をerror rate-bounded classification schemeによって求めた。すなわち本剤10μg含有Disc (直径6.5mm) を用い, 接種菌量を104~5cells/cm2とし感受性検査を施行する場合, 14mm以上の阻止円直径を示す菌株は, 本剤の臨床的感受性域にあると考えられた。 4. 呼吸器感染症11例につき本剤の臨床効果を観察し, 総合的臨床所見から11例中9例は有効, 2例が無効であった。起炎菌の明確な9例中7例は除菌できたが, P.aeruginosaを起炎菌とする2例は除菌不能であった。この2例は, びまん性慢性気道病変を特徴とする難治性感染症であった。そこで緑膿菌性難治性呼吸器感染症の1治療法として本剤の吸入療法を試みたが良好な臨床効果が得られず, 今後さらに検討が必要となった。なお本剤投与による副作用は認めなかった。
ISSN:0009-3165
1884-5894
DOI:10.11250/chemotherapy1953.28.64