下咽頭を主病巣とする難治性咽頭潰瘍の1例

今回我々は下咽頭を主病巣とする難治性咽頭潰瘍の1例を経験したので, 文献的考察を加えて報告した。症例は35歳の男性で当初右口蓋扁桃に潰瘍を認め, 両口蓋扁桃摘出術後は下咽頭左側壁に潰瘍が出現した。ベーチェット病, クローン病, 悪性腫瘍は否定的であり原因が特定できず, 2ヵ月以上治癒しなかったため難治性咽頭潰瘍と考えた。入院し局所療法を中心に治療し, 経過中咽頭から検出されたMRSAの除菌を契機に潰瘍所見は改善を認め, 現在は再発なく経過している。 口腔咽頭に発生する治療抵抗性の潰瘍性病変の中に原因不明である難治性口腔咽頭潰瘍が存在する。難治性咽頭潰瘍はまれであり原因不明であるが, 病因に免疫...

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Published in耳鼻咽喉科展望 Vol. 47; no. 4; pp. 243 - 247
Main Authors 佐野, 大佑, 松田, 秀樹, 池間, 陽子, 中川, 千尋, 佃, 守
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 耳鼻咽喉科展望会 15.08.2004
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ISSN0386-9687
1883-6429
DOI10.11453/orltokyo1958.47.243

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Summary:今回我々は下咽頭を主病巣とする難治性咽頭潰瘍の1例を経験したので, 文献的考察を加えて報告した。症例は35歳の男性で当初右口蓋扁桃に潰瘍を認め, 両口蓋扁桃摘出術後は下咽頭左側壁に潰瘍が出現した。ベーチェット病, クローン病, 悪性腫瘍は否定的であり原因が特定できず, 2ヵ月以上治癒しなかったため難治性咽頭潰瘍と考えた。入院し局所療法を中心に治療し, 経過中咽頭から検出されたMRSAの除菌を契機に潰瘍所見は改善を認め, 現在は再発なく経過している。 口腔咽頭に発生する治療抵抗性の潰瘍性病変の中に原因不明である難治性口腔咽頭潰瘍が存在する。難治性咽頭潰瘍はまれであり原因不明であるが, 病因に免疫異常の関与が考えられている。診断法は現状では確立されておらず, 除外診断が中心となり, その中でも口腔, 咽頭の潰瘍を伴う悪性腫瘍やベーチェット病等を否定する必要がある。治療法も確定したものがなく, 治療に難渋することが多い。本症例では対症療法に加え, 咽頭のMRSAの除菌により潰瘍の治癒が促進されたと考えられ, 局所の免疫状態を改善する意味でも, 細菌等による二次的な修飾に対する対処療法の重要性を感じた。
ISSN:0386-9687
1883-6429
DOI:10.11453/orltokyo1958.47.243