巨大鼠径ヘルニア嵌頓の1例

今回,治療に難渋した巨大鼠径ヘルニア嵌頓の1例を経験したので報告する.症例は63歳,男性. 10年程前より右陰嚢の腫大に気付き,増大傾向であったが放置していた. 2年前より気管支喘息の治療を受けている.早朝より粘血便,下腹部痛が出現し,増悪してきたため夕方に来院した.来院時右鼠径部から陰嚢にかけて著明に膨隆し,陰嚢底部は臥位で右膝関節直上付近まで達していた.右下腹部を中心に強い圧痛を認め,腹部単純X線検査および腹部CT検査でイレウス像と右鼠径部から陰嚢内に及ぶ腸管ガス像を認めた.以上より巨大右鼠径ヘルニア嵌頓の診断で緊急手術を施行した.まず右鼠径部を切開し鼠径管を開放すると,空腸から上行結腸ま...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 66; no. 10; pp. 2607 - 2611
Main Authors 朝蔭, 直樹, 後藤, 達哉, 鈴木, 貴久, 佐々木, 森雄, 塚田, 健次, 小林, 滋
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 日本臨床外科学会 25.10.2005
Subjects
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.66.2607

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Summary:今回,治療に難渋した巨大鼠径ヘルニア嵌頓の1例を経験したので報告する.症例は63歳,男性. 10年程前より右陰嚢の腫大に気付き,増大傾向であったが放置していた. 2年前より気管支喘息の治療を受けている.早朝より粘血便,下腹部痛が出現し,増悪してきたため夕方に来院した.来院時右鼠径部から陰嚢にかけて著明に膨隆し,陰嚢底部は臥位で右膝関節直上付近まで達していた.右下腹部を中心に強い圧痛を認め,腹部単純X線検査および腹部CT検査でイレウス像と右鼠径部から陰嚢内に及ぶ腸管ガス像を認めた.以上より巨大右鼠径ヘルニア嵌頓の診断で緊急手術を施行した.まず右鼠径部を切開し鼠径管を開放すると,空腸から上行結腸まで約300cmの腸管が脱出し空腸の一部が壊死していた.鼠径法では還納が困難であったため,上腹部正中切開を追加し脱出腸管を腹腔内に還納した.ヘルニア門は超手拳大で, PROLENE® Hernia System (L サイズ)を用い修復した.術後腹腔内圧の上昇もあり,気管支喘息重積発作を併発するなど呼吸状態が悪化した.早期離床が困難となり,深部静脈血栓症予防など慎重な周術期管理が必要であった.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.66.2607