心臓血管外科手術における輸血療法の変遷
心臓血管外科手術においては, 体外循環を使用する関係上, 輸血は必須と以前では考えられていたが, 自己血輸血の導入により, 近年では同種血無輸血手術が高率に達成可能となってきた. 今回, 当施設開設以来の輸血療法の変遷に関し検討した. 【当施設における輸血方針】開設当初は, 手術に際し新鮮血輸血を積極的に行っていたが, 輸血後GVHD症例を経験したことから, 1986年6月以降自己血輸血を第一選択とし, 同種血輸血をなるべく避ける方針に転換した. 最初は主に冷凍保存血を用いていたが, 1989年5月からはエリスロポエチンを投与して液状保存血での貯血も行うようになり, 貯血期間に応じて両者を併用...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 49; no. 2; p. 195 |
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Main Authors | , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
01.05.2003
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ISSN | 0546-1448 |
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Summary: | 心臓血管外科手術においては, 体外循環を使用する関係上, 輸血は必須と以前では考えられていたが, 自己血輸血の導入により, 近年では同種血無輸血手術が高率に達成可能となってきた. 今回, 当施設開設以来の輸血療法の変遷に関し検討した. 【当施設における輸血方針】開設当初は, 手術に際し新鮮血輸血を積極的に行っていたが, 輸血後GVHD症例を経験したことから, 1986年6月以降自己血輸血を第一選択とし, 同種血輸血をなるべく避ける方針に転換した. 最初は主に冷凍保存血を用いていたが, 1989年5月からはエリスロポエチンを投与して液状保存血での貯血も行うようになり, 貯血期間に応じて両者を併用している. また, 1997年6月からは体外循環を用いないOff-pump CABG(OPCAB)を導入し, 輸血の必要量が減少してきた. 【対象, 方法】1982年4月から2002年12月までの当施設での心臓大血管手術総数は3067例であり, 内訳は冠状動脈バイパス術(CABG)2133例, 弁関連手術574例, 大血管手術180例, その他(心房中隔欠損症, 心臓腫瘍等)180例であった. これらの症例の同種血無輸血率を, 自己血輸血導入前後で比較検討した. 【結果】自己血輸血導入前の445例では, 同種血無輸血率は6.5%と低値であったが, 自己血輸血導入後の2622例では67.2%と高値(p<0.0001)であり, 貯血例1831例では84.6%であった. 貯血症例における同種血無輸血率を術式毎にみると, CABG83.5%, 弁手術88.3%, 大血管手術76.2%, その他94.2%であり, 大血管手術においても同種血無輸血手術は十分可能と考えられる. また, OPCAB症例全体での同種血無輸血率は76.4%であり, 貯血症例では97.4%の高率であった. 【結語】以前は輸血が必須と考えられていた心臓血管外科手術においても, 自己血輸血の導入により多くの症例で同種血無輸血手術が可能となった. 今後もこの方針を継続していく. |
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ISSN: | 0546-1448 |