急速に両側乳房が腫大した女性化乳房の1例

「抄録」短期間に急速に腫大した両側女性化乳房症で, 両側乳頭温存乳腺全切除術を施行し, 改善した症例を経験したので文献的考察を加えて報告する. 症例は37歳男性. X年6月頃より両側乳房腫大を自覚した. X年7月に前医を受診し, 超音波検査や左乳房の穿刺吸引細胞診の結果より悪性所見はなく経過観察となっていた. その後約2か月間で両側乳房が急速に腫大するため当院へ紹介受診となった. 視触診で両側の著しい乳房腫大を認め, 超音波検査では, 均質に腫大した乳腺と左乳房腫瘤(17mm×10mm)を認めた. 両側乳房の増大が持続していることと, 本人の強い希望により切除の方針となった. 術式は両側乳頭温...

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Published in川崎医学会誌 Vol. 50; pp. 29 - 34
Main Authors 松本築, 高岡宗徳, 道田希実子, 中村有希, 岸野瑛美, 太田裕介, 土井原博義, 中島一毅, 山辻知樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 川崎医学会 2024
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Summary:「抄録」短期間に急速に腫大した両側女性化乳房症で, 両側乳頭温存乳腺全切除術を施行し, 改善した症例を経験したので文献的考察を加えて報告する. 症例は37歳男性. X年6月頃より両側乳房腫大を自覚した. X年7月に前医を受診し, 超音波検査や左乳房の穿刺吸引細胞診の結果より悪性所見はなく経過観察となっていた. その後約2か月間で両側乳房が急速に腫大するため当院へ紹介受診となった. 視触診で両側の著しい乳房腫大を認め, 超音波検査では, 均質に腫大した乳腺と左乳房腫瘤(17mm×10mm)を認めた. 両側乳房の増大が持続していることと, 本人の強い希望により切除の方針となった. 術式は両側乳頭温存乳腺全切除術を行った. 術後の乳輪の陥没を避けるため, 両側とも乳頭直下に1cm厚程度の乳腺組織を温存した. 術後出血なく, 4日後に退院となった. 切除標本は腫大した乳腺組織であり割面では左側のC領域には境界明瞭な淡褐色調な結節病変を認めた. 組織学的に両側の乳腺は2相性を伴って増生した乳管を認め, 女性化乳房の病理所見であり, 左側の結節は線維腺腫の所見であった. 一部に乳腺偽血管腫様過形成(pseudoangiomatous stromal hyperplasia)も伴っていた. 術後約1年間経過したが再発は認めない.
ISSN:0386-5924