神経ブロック 島根医科大学麻酔科ペインクリニックにおける持続硬膜外ブロックの方法

I穿刺方法 1)準備 体位は, ほとんどの場合側臥位とするが, 肥満患者の頚部硬膜外穿刺の場合は, 坐位にて施行する場合もある. いすに座り, 硬膜外針の刺入位置が術者の胸骨の剣状突起から乳頭の高さまでの範囲にブロック台の高さを調節する. 手袋の前に衛生学的な手洗いを行う. 刺入部位の確認は, ヤコビーラインや頚椎棘突起の大きさなどを目安に触診視診にて行う. 当科ではportex社製の18ゲージディスポTuohy針のセットを用いている. セットの準備を行った後に, 消毒を行う. 0.5%グルコン酸クロルヘキシジン入り80%エタノールを浸した綿球で4回以上行い, 穴布をかける. 2)硬膜外腔確認...

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Published in日本ペインクリニック学会誌 Vol. 10; no. 3; p. 306
Main Author 土井克史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ペインクリニック学会 25.06.2003
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ISSN1340-4903

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Abstract I穿刺方法 1)準備 体位は, ほとんどの場合側臥位とするが, 肥満患者の頚部硬膜外穿刺の場合は, 坐位にて施行する場合もある. いすに座り, 硬膜外針の刺入位置が術者の胸骨の剣状突起から乳頭の高さまでの範囲にブロック台の高さを調節する. 手袋の前に衛生学的な手洗いを行う. 刺入部位の確認は, ヤコビーラインや頚椎棘突起の大きさなどを目安に触診視診にて行う. 当科ではportex社製の18ゲージディスポTuohy針のセットを用いている. セットの準備を行った後に, 消毒を行う. 0.5%グルコン酸クロルヘキシジン入り80%エタノールを浸した綿球で4回以上行い, 穴布をかける. 2)硬膜外腔確認方法 原則的に, 穿刺は原則的に正中法で行う. まず穿刺する椎間の棘上靭帯の左右を, 左手の中指と人差し指で十分に固定する. 次いでその上下の棘突起の中点で, かつ棘上靭帯の中点に局所浸潤麻酔の針を刺入する. このとき1%メピバカインを使用し, 26ゲージ25mm針を用いる. 次に22ゲージ38mm針に付け替えて, 棘間靭帯内までより深部まで浸潤麻酔を行う. このとき注入の抵抗があり, 骨にあたらない方向を確認する. 次いでTuohy針を右手に持ち, 針のbevelを頭側に向け, 背面皮膚に左右にぶれないように, 22ゲージ針で確かめた方向へ刺入する. 棘上靭帯を通過した後棘間靭帯内まで到達したところで, スタイレットを抜く. 硬膜外腔の確認は, 水滴法か生理食塩水を入れたシリンジによる抵抗消失法のいずれかで行う. 抵抗消失法の場合, 生食の注入量はできるだけ少なくする. 3)カテーテルの挿入固定 挿入時, 放散痛などの刺激がないことを確認しながら, 硬膜外腔へ5~8cmゆっくり挿入する. カテーテルからの脳脊髄液, 血液の逆流を確かめ, 1%メピバカイン2~3mlを注入して, テストドーズとする. ブロック効果を症状の軽減の度合いとアルコール綿による冷覚消失域にて評価する. ガーゼつきバンソウコウでまず刺入部を固定して, カテーテルは背部に固定し, 患者の肩口から前面へ出す. IIカテーテル管理 カテーテル刺入部の消毒は, 原則毎日0.5%グルコン酸クロルヘキシジン入り80%エタノールにて行う. 刺入部の発赤や疼痛, 注入時痛をチェックする. 異常があれば抜去や抗生剤の投与を行う. 長期管理は症例毎の症状や原疾患により考慮するが, おおむね2週間の連続したカテーテル管理を目安としている. それ以上になる場合, 再挿入や抜去して硬膜外ブロックの中止を検討する. III使用薬剤と注入方法 1)薬剤 腰下肢痛や帯状疱疹による疼痛などに対してはまず局所麻酔薬のみを使用する. 1%メピバカインを第一選択としている. 運動麻痺が気になる症例ではロピバカインに変更する場合も多い. 術後疼痛や癌性疼痛に対しては, 局所麻酔薬にオピオイドを添加する. 術後に対してはロピバカインを第一選択とし, フェンタニル, ブプレノルフィンなどを混入する場合が多い. 癌性疼痛では局所麻酔薬をメピバカイン, ブピバカインに変えて, モルヒネを混ぜることが多い. 2)投与方法 持続注入法を基本としている. 一時間あたり2~6mlを症状や血圧低下を見ながら投与する. 使用機材は, 携帯型ディスポーザブル注入器とバッテリー駆動のPCAポンプを使用している. 高齢者には単純な方法のディスポーザブルポンプを使用することが多い. 以上, 当院における頚胸部持続硬膜外ブロックにおける刺入法とその管理方法(薬物の選択, 投与方法も含む)についてビデオにて供覧する.
AbstractList I穿刺方法 1)準備 体位は, ほとんどの場合側臥位とするが, 肥満患者の頚部硬膜外穿刺の場合は, 坐位にて施行する場合もある. いすに座り, 硬膜外針の刺入位置が術者の胸骨の剣状突起から乳頭の高さまでの範囲にブロック台の高さを調節する. 手袋の前に衛生学的な手洗いを行う. 刺入部位の確認は, ヤコビーラインや頚椎棘突起の大きさなどを目安に触診視診にて行う. 当科ではportex社製の18ゲージディスポTuohy針のセットを用いている. セットの準備を行った後に, 消毒を行う. 0.5%グルコン酸クロルヘキシジン入り80%エタノールを浸した綿球で4回以上行い, 穴布をかける. 2)硬膜外腔確認方法 原則的に, 穿刺は原則的に正中法で行う. まず穿刺する椎間の棘上靭帯の左右を, 左手の中指と人差し指で十分に固定する. 次いでその上下の棘突起の中点で, かつ棘上靭帯の中点に局所浸潤麻酔の針を刺入する. このとき1%メピバカインを使用し, 26ゲージ25mm針を用いる. 次に22ゲージ38mm針に付け替えて, 棘間靭帯内までより深部まで浸潤麻酔を行う. このとき注入の抵抗があり, 骨にあたらない方向を確認する. 次いでTuohy針を右手に持ち, 針のbevelを頭側に向け, 背面皮膚に左右にぶれないように, 22ゲージ針で確かめた方向へ刺入する. 棘上靭帯を通過した後棘間靭帯内まで到達したところで, スタイレットを抜く. 硬膜外腔の確認は, 水滴法か生理食塩水を入れたシリンジによる抵抗消失法のいずれかで行う. 抵抗消失法の場合, 生食の注入量はできるだけ少なくする. 3)カテーテルの挿入固定 挿入時, 放散痛などの刺激がないことを確認しながら, 硬膜外腔へ5~8cmゆっくり挿入する. カテーテルからの脳脊髄液, 血液の逆流を確かめ, 1%メピバカイン2~3mlを注入して, テストドーズとする. ブロック効果を症状の軽減の度合いとアルコール綿による冷覚消失域にて評価する. ガーゼつきバンソウコウでまず刺入部を固定して, カテーテルは背部に固定し, 患者の肩口から前面へ出す. IIカテーテル管理 カテーテル刺入部の消毒は, 原則毎日0.5%グルコン酸クロルヘキシジン入り80%エタノールにて行う. 刺入部の発赤や疼痛, 注入時痛をチェックする. 異常があれば抜去や抗生剤の投与を行う. 長期管理は症例毎の症状や原疾患により考慮するが, おおむね2週間の連続したカテーテル管理を目安としている. それ以上になる場合, 再挿入や抜去して硬膜外ブロックの中止を検討する. III使用薬剤と注入方法 1)薬剤 腰下肢痛や帯状疱疹による疼痛などに対してはまず局所麻酔薬のみを使用する. 1%メピバカインを第一選択としている. 運動麻痺が気になる症例ではロピバカインに変更する場合も多い. 術後疼痛や癌性疼痛に対しては, 局所麻酔薬にオピオイドを添加する. 術後に対してはロピバカインを第一選択とし, フェンタニル, ブプレノルフィンなどを混入する場合が多い. 癌性疼痛では局所麻酔薬をメピバカイン, ブピバカインに変えて, モルヒネを混ぜることが多い. 2)投与方法 持続注入法を基本としている. 一時間あたり2~6mlを症状や血圧低下を見ながら投与する. 使用機材は, 携帯型ディスポーザブル注入器とバッテリー駆動のPCAポンプを使用している. 高齢者には単純な方法のディスポーザブルポンプを使用することが多い. 以上, 当院における頚胸部持続硬膜外ブロックにおける刺入法とその管理方法(薬物の選択, 投与方法も含む)についてビデオにて供覧する.
Author 土井克史
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Snippet I穿刺方法 1)準備 体位は, ほとんどの場合側臥位とするが, 肥満患者の頚部硬膜外穿刺の場合は, 坐位にて施行する場合もある. いすに座り, 硬膜外針の刺入位置が術者の胸骨の剣状突起から乳頭の高さまでの範囲にブロック台の高さを調節する. 手袋の前に衛生学的な手洗いを行う. 刺入部位の確認は,...
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