薬物のモニタリングとしての血小板凝集能検査の方法について
従来, 当センターでは血小板凝集能検査は, 血小板製剤のin vitroでの輸血効果の指標として精度管理に用いる傍ら, 医療機関からの要請により, 血小板無力症など血小板機能低下症患者の診断の為の検査として用いてきた. しかし, 近年, このような血小板機能低下患者の診断ではなく, 逆に血小板機能亢進症の診断, 更に, これらの患者に投与される抗血小板薬の効果判定などのための検査要請が医療機関からあり, 従来の方法では判定が難しいと考えられた. その対応としてメバニクス社が開発したGrading Curveを用いた判定方法を試みた. 対象:熊本県赤十字病院内科および脳外科を受診した患者の内,...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 43; no. 6; pp. 1009 - 1010 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
01.12.1997
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ISSN | 0546-1448 |
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Summary: | 従来, 当センターでは血小板凝集能検査は, 血小板製剤のin vitroでの輸血効果の指標として精度管理に用いる傍ら, 医療機関からの要請により, 血小板無力症など血小板機能低下症患者の診断の為の検査として用いてきた. しかし, 近年, このような血小板機能低下患者の診断ではなく, 逆に血小板機能亢進症の診断, 更に, これらの患者に投与される抗血小板薬の効果判定などのための検査要請が医療機関からあり, 従来の方法では判定が難しいと考えられた. その対応としてメバニクス社が開発したGrading Curveを用いた判定方法を試みた. 対象:熊本県赤十字病院内科および脳外科を受診した患者の内, 血小板機能亢進によると思われる疾病をもち, 抗血小板療法を行っている, または行う予定の患者. 方法:測定機器;二光バイオサイエンスHEMATRACER601. 惹起物質;ADP(終濃度;0.5, 1.0, 2.0, 4.0μM). 測定時期;急性期, 投与前, 投与後1週間, 3ヵ月, 6ヵ月, 1年目の計6回. 判定方法:それぞれのADP濃度における5分値凝集率(%)をプロットし, Grading Curveを作成. その凝集能パターンにより, 著明亢進から著明低下までIII, II, I, 0, -I, -IIの6Typeに分類して判定. また, 分類に際してGrading Curveが複数のタイプにまたがる場合は, 最大凝集率の50%ラインを横切る地点のタイプとした. 目標:凝集能パターンを〔I〕または〔0〕に維持すること. 結果:平成6年11月から平成7年9月末現在, 患者数60例, 検査件数84件. そのうち抗血小板薬投与前後のモニタリング済みの患者10例は投与前のGradeがII~0であったものが0~-IIへと血小板凝集能は抑制されていた. また, 投与後1週間で-IIに抑制されていた1例については, 薬剤の量を減らし, 3ヵ月後の検査では, 目標値であるGrade 0にコントロールされていた. 考察:まだ例数は少なく, 臨床効果や副作用の防止にどの程度役立つか不明だが, 判定方法に主観が入りにくく, 誰が判定しても同様の結果が得られ, また, 凝集惹起物質としてADPのみを用いるため, 安価であり, 加えて簡便であるため受け入れられ易い方法だと考える. おわりに:現在, 当センターでは, 地域医療の向上のため, 血液事業における技術を生かして腎移植, 幹細胞移植, 自己血輸血, 習慣性流産防止のための免疫療法など医療機関と研究協力をおこなっている. 今後, 血小板機能検査を加えて, 更に幅の広い協力ができれば幸いだと考えている. |
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ISSN: | 0546-1448 |