経管栄養・食事介助施行中の体位保持について~背抜きのアンケート調査を行なって
<はじめに>当病棟には, 高齢で日常生活動作の低下に伴う嚥下障害がある患者が多く入院している. そのため, 日常生活の援助は, 看護業務の中でも, 重要な役割を占めている. 日頃より, 食事介助時や経管栄養中に自力座位が保持できない患者に対し, ベッドアップを行ない, 体位変換用の除圧クッションや枕・掛け布団などで, 体位が崩れないように工夫をしている. しかし経管栄養時や食事中の体位が長い時間保持できずに, 途中数回の体位の修正を行なっているのが現状である. そこで「背抜き」についての認識度・有用性についてのアンケート調査を行なった. その結果スタッフ間に「背抜き」の有用性を意識...
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Published in | 日本農村医学会雑誌 Vol. 54; no. 3; p. 590 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本農村医学会
01.09.2005
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ISSN | 0468-2513 |
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Abstract | <はじめに>当病棟には, 高齢で日常生活動作の低下に伴う嚥下障害がある患者が多く入院している. そのため, 日常生活の援助は, 看護業務の中でも, 重要な役割を占めている. 日頃より, 食事介助時や経管栄養中に自力座位が保持できない患者に対し, ベッドアップを行ない, 体位変換用の除圧クッションや枕・掛け布団などで, 体位が崩れないように工夫をしている. しかし経管栄養時や食事中の体位が長い時間保持できずに, 途中数回の体位の修正を行なっているのが現状である. そこで「背抜き」についての認識度・有用性についてのアンケート調査を行なった. その結果スタッフ間に「背抜き」の有用性を意識付けすることが出来, 固定具だけに頼ることなく安定した体位保持が出来るようになったのでここに報告する. <研究目的>固定用具・保持用具に頼ることを少なく, 経管栄養時や食事介助時に安楽な体位を長時間保持できるよう看護ケアの基本を再認識することを目的とする. <研究方法>1.研究期間:平成17年3月1日~3月31日 2.対象:当病棟看護師21名 3.調査方法:記述式アンケート調査 4.背抜きについての勉強会の実施 <結果>事前アンケート調査ではベッドアップはどの位の角度で行なっているかの質問に対し, 60°と答えたスタッフが多く, また, ベッドアップをし, その後の体位の崩れを感じたかの問いに対し, ほとんどのスタッフが感じていると答えた. また, 崩れた体位に対し, どのように対応したかの問いに対し, 用具を使用して再度保持したスタッフが7割であった. 一回の食事介助に何回くらい体位を直しているか聴いたところ, 2回と答えたスタッフが最も多かった. そして「背抜き」に対して質問したところ, 半数以上のスタッフが, 「知らない」との結果であった. アンケート実施後, 背抜きについての勉強会を実施し, 背抜きの必要性や効果についてスタッフに伝達した. その後, スタッフに食事介助や経管栄養中のベッドアップ時に背抜きを取り入れて, 実際にどのような印象であったか事後アンケート調査を行なった「以前より崩れなくなった」との回答が全員からえられ, 今後背抜きをおこなったほうがよいですかの質問には「はい」との答えが得られた. <考察>今まではただ崩れないようにする事にばかりに気をつかっていたのではないかと感じた. そのため身体の周囲をかためることで崩れなくなると思い込み, 用具に頼り過ぎていたのではないかと考える. 上田らは, 「ギャッジアップの角度が大きいほど「背抜き」前の体圧やずれ力も増加するが, 「背抜き」を行なうことで, ずれ力はジャッジアップの角度に関わらず減少した」1)と述べている. このように背抜きは安楽な体位の保持を自分で行なえない患者にとってベッドアップの際に身体の重心や姿勢を整える重要な手技と考える. またこのことにより基礎看護技術の大切さを再認識し患者の安楽にもつながる統一した看護が提供することができると考える. そして背抜きを行なう事により除圧され体位の崩れも軽減し褥瘡予防にもつながるのではないかと考える. <おわりに>今回のアンケート調査により日頃行なっている看護業務の基礎を見直す事が出来, 固定具だけに頼ることなく, これからも患者の安全・安楽を考えたよりよい看護提供を心がけていきたい. <引用文献・参考文献>1)上田三千代, 他:周手術期の褥瘡発生のリスクが高い患者に対するケア, 月刊ナーシング, 23(5), p.72, 2003. 2)大久保裕子, 他:ベッドの背を上げ下げするときの身体の影響, 日本褥瘡学会(JpnJPU), 2(1):p.45-50, 2000. 3)大浦武彦:わかりやすい褥瘡予防・治療ガイド, p.28-101, 2001. |
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AbstractList | <はじめに>当病棟には, 高齢で日常生活動作の低下に伴う嚥下障害がある患者が多く入院している. そのため, 日常生活の援助は, 看護業務の中でも, 重要な役割を占めている. 日頃より, 食事介助時や経管栄養中に自力座位が保持できない患者に対し, ベッドアップを行ない, 体位変換用の除圧クッションや枕・掛け布団などで, 体位が崩れないように工夫をしている. しかし経管栄養時や食事中の体位が長い時間保持できずに, 途中数回の体位の修正を行なっているのが現状である. そこで「背抜き」についての認識度・有用性についてのアンケート調査を行なった. その結果スタッフ間に「背抜き」の有用性を意識付けすることが出来, 固定具だけに頼ることなく安定した体位保持が出来るようになったのでここに報告する. <研究目的>固定用具・保持用具に頼ることを少なく, 経管栄養時や食事介助時に安楽な体位を長時間保持できるよう看護ケアの基本を再認識することを目的とする. <研究方法>1.研究期間:平成17年3月1日~3月31日 2.対象:当病棟看護師21名 3.調査方法:記述式アンケート調査 4.背抜きについての勉強会の実施 <結果>事前アンケート調査ではベッドアップはどの位の角度で行なっているかの質問に対し, 60°と答えたスタッフが多く, また, ベッドアップをし, その後の体位の崩れを感じたかの問いに対し, ほとんどのスタッフが感じていると答えた. また, 崩れた体位に対し, どのように対応したかの問いに対し, 用具を使用して再度保持したスタッフが7割であった. 一回の食事介助に何回くらい体位を直しているか聴いたところ, 2回と答えたスタッフが最も多かった. そして「背抜き」に対して質問したところ, 半数以上のスタッフが, 「知らない」との結果であった. アンケート実施後, 背抜きについての勉強会を実施し, 背抜きの必要性や効果についてスタッフに伝達した. その後, スタッフに食事介助や経管栄養中のベッドアップ時に背抜きを取り入れて, 実際にどのような印象であったか事後アンケート調査を行なった「以前より崩れなくなった」との回答が全員からえられ, 今後背抜きをおこなったほうがよいですかの質問には「はい」との答えが得られた. <考察>今まではただ崩れないようにする事にばかりに気をつかっていたのではないかと感じた. そのため身体の周囲をかためることで崩れなくなると思い込み, 用具に頼り過ぎていたのではないかと考える. 上田らは, 「ギャッジアップの角度が大きいほど「背抜き」前の体圧やずれ力も増加するが, 「背抜き」を行なうことで, ずれ力はジャッジアップの角度に関わらず減少した」1)と述べている. このように背抜きは安楽な体位の保持を自分で行なえない患者にとってベッドアップの際に身体の重心や姿勢を整える重要な手技と考える. またこのことにより基礎看護技術の大切さを再認識し患者の安楽にもつながる統一した看護が提供することができると考える. そして背抜きを行なう事により除圧され体位の崩れも軽減し褥瘡予防にもつながるのではないかと考える. <おわりに>今回のアンケート調査により日頃行なっている看護業務の基礎を見直す事が出来, 固定具だけに頼ることなく, これからも患者の安全・安楽を考えたよりよい看護提供を心がけていきたい. <引用文献・参考文献>1)上田三千代, 他:周手術期の褥瘡発生のリスクが高い患者に対するケア, 月刊ナーシング, 23(5), p.72, 2003. 2)大久保裕子, 他:ベッドの背を上げ下げするときの身体の影響, 日本褥瘡学会(JpnJPU), 2(1):p.45-50, 2000. 3)大浦武彦:わかりやすい褥瘡予防・治療ガイド, p.28-101, 2001. |
Author | 前田聖子 白土美由紀 飯村早苗 黒田薫 |
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