全身温熱療法による糖尿病発症抑制効果-II型糖尿病モデルマウスにおける検討

【背景と目的】癌に対する温熱療法の効果増強方法を検討するなかで, 我々は, 温熱処理が炎症に関連する転写因子NF-kBの活性化を抑制することを明らかとした. それ以来, 温熱療法の抗炎症作用に注目している. 近年, インスリン抵抗性の惹起に, インスリン標的器官である骨格筋, 肝臓に蓄積した中性脂肪がIKKβの活性化(NF-kBの活性化)を介した糖取り込みの低下が関与していることが報告された. そこで, II型糖尿病モデルマウスを用いて, 糖尿病発症過程における全身温熱療法の影響を検討した. 【方法】II型糖尿病モデルマウスのdb/dbマウス(6週齢)に, 40℃, 30分の全身加温を週3回ペ...

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Published in日本ハイパーサーミア学会誌 Vol. 22; no. 2; pp. 107 - 108
Main Authors 足立聡子, 古倉聡, 水島かつら, 服部武司, 奥田敏充, 中部奈美, 真鍋えみ子, 半田修, 内藤裕二, 吉田憲正, 吉川敏一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ハイパーサーミア学会 01.06.2006
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Abstract 【背景と目的】癌に対する温熱療法の効果増強方法を検討するなかで, 我々は, 温熱処理が炎症に関連する転写因子NF-kBの活性化を抑制することを明らかとした. それ以来, 温熱療法の抗炎症作用に注目している. 近年, インスリン抵抗性の惹起に, インスリン標的器官である骨格筋, 肝臓に蓄積した中性脂肪がIKKβの活性化(NF-kBの活性化)を介した糖取り込みの低下が関与していることが報告された. そこで, II型糖尿病モデルマウスを用いて, 糖尿病発症過程における全身温熱療法の影響を検討した. 【方法】II型糖尿病モデルマウスのdb/dbマウス(6週齢)に, 40℃, 30分の全身加温を週3回ペースで12週間行なった. 全身加温には, マウス用遠赤外線全身加温装置を用いた. 経時的に体重, 食事摂取量, 空腹時血糖を測定し, 適時糖負荷試験およびインスリン負荷試験を行なった. また, 糖尿病性腎症の合併について, 尿中アルブミンの測定により検討した. 【結果】(1)体重変動:温熱療法施行群では, 17週齢まで増加し続けたが, 無処置群では, 9週齢以降は体重の増加を認めなかった. (2)摂食量:両群間で差を認めなかった. (3)空腹時血糖:7週齢以降は温熱療法施行群で, 有意に低値を示した. (4)糖負荷試験:温熱療法施行群においては, 空腹時血糖が即座に上昇し, 2時間以内にほぼ前値に戻った. 無処理群では血糖増加がより大きく, 前値への復帰が遅延した. (5)インスリン負荷試験:負荷したインスリンに対する反応性は, 温熱療法群のほうが無処理群に比して優れていた. (6)尿中アルブミン:17週齢時の尿中アルブミン量は, 温熱療法群より無処理群のほうが有意に多かった. 【結論】全身温熱療法は, 糖尿病の発症を抑制あるいは遅延させることがII型糖尿病モデルマウスを用いた検討で明らかとなった.
AbstractList 【背景と目的】癌に対する温熱療法の効果増強方法を検討するなかで, 我々は, 温熱処理が炎症に関連する転写因子NF-kBの活性化を抑制することを明らかとした. それ以来, 温熱療法の抗炎症作用に注目している. 近年, インスリン抵抗性の惹起に, インスリン標的器官である骨格筋, 肝臓に蓄積した中性脂肪がIKKβの活性化(NF-kBの活性化)を介した糖取り込みの低下が関与していることが報告された. そこで, II型糖尿病モデルマウスを用いて, 糖尿病発症過程における全身温熱療法の影響を検討した. 【方法】II型糖尿病モデルマウスのdb/dbマウス(6週齢)に, 40℃, 30分の全身加温を週3回ペースで12週間行なった. 全身加温には, マウス用遠赤外線全身加温装置を用いた. 経時的に体重, 食事摂取量, 空腹時血糖を測定し, 適時糖負荷試験およびインスリン負荷試験を行なった. また, 糖尿病性腎症の合併について, 尿中アルブミンの測定により検討した. 【結果】(1)体重変動:温熱療法施行群では, 17週齢まで増加し続けたが, 無処置群では, 9週齢以降は体重の増加を認めなかった. (2)摂食量:両群間で差を認めなかった. (3)空腹時血糖:7週齢以降は温熱療法施行群で, 有意に低値を示した. (4)糖負荷試験:温熱療法施行群においては, 空腹時血糖が即座に上昇し, 2時間以内にほぼ前値に戻った. 無処理群では血糖増加がより大きく, 前値への復帰が遅延した. (5)インスリン負荷試験:負荷したインスリンに対する反応性は, 温熱療法群のほうが無処理群に比して優れていた. (6)尿中アルブミン:17週齢時の尿中アルブミン量は, 温熱療法群より無処理群のほうが有意に多かった. 【結論】全身温熱療法は, 糖尿病の発症を抑制あるいは遅延させることがII型糖尿病モデルマウスを用いた検討で明らかとなった.
Author 内藤裕二
足立聡子
中部奈美
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Snippet 【背景と目的】癌に対する温熱療法の効果増強方法を検討するなかで, 我々は, 温熱処理が炎症に関連する転写因子NF-kBの活性化を抑制することを明らかとした. それ以来, 温熱療法の抗炎症作用に注目している. 近年, インスリン抵抗性の惹起に, インスリン標的器官である骨格筋,...
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Title 全身温熱療法による糖尿病発症抑制効果-II型糖尿病モデルマウスにおける検討
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