食道外科における自己血,無輸血手術
食道癌に対する食道切除リンパ節郭清術における自己血, および無輸血管理の臨床的意義について検討した. 対象と方法:術前未治療で右開胸下食道切除, 3領域リンパ節郭清により根治度B以上が得られた胸部食道癌のうち, 輸血, 重複癌の既往の無い232例を対象とした. 周術期に他家血輸血を行った1990年~95年の97例をA群, 800gの術前貯血により他家血を用いなかった96年~99年6月までの69例をB群, 術前貯血なく無輸血で管理した99年7月~2001年までの66例をC群とし, 輸血の状況別に術後成績を比較した. 結果:3群間の背景因子は差がなかった. A, B群間の比較では, B群で出血量が...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 49; no. 2; p. 199 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
01.05.2003
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ISSN | 0546-1448 |
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Summary: | 食道癌に対する食道切除リンパ節郭清術における自己血, および無輸血管理の臨床的意義について検討した. 対象と方法:術前未治療で右開胸下食道切除, 3領域リンパ節郭清により根治度B以上が得られた胸部食道癌のうち, 輸血, 重複癌の既往の無い232例を対象とした. 周術期に他家血輸血を行った1990年~95年の97例をA群, 800gの術前貯血により他家血を用いなかった96年~99年6月までの69例をB群, 術前貯血なく無輸血で管理した99年7月~2001年までの66例をC群とし, 輸血の状況別に術後成績を比較した. 結果:3群間の背景因子は差がなかった. A, B群間の比較では, B群で出血量が少なく, 手術時間も短かったが, 術後合併症の頻度は差がなかった. B群の予後はA群より軽度良好であった(p=0.062). リンパ節転移陽性例, pT3-4例に限るとB群の予後はA群より有意に良好であった(p=0.045, 0.035). 多変量解析にて他家輸血のみが再発の危険因子であった. B群のうち自己血輸血を行った53例をAuBT群, 全く輸血を行わなかったB群13例とC群の計76例をNoBT群とし比較した. NoBT群で出血量が少なく, 手術時間も短かった. NoBT群の予後はAuBT群よ軽度良好であった(p=0.082). 非感染性の合併症の頻度は両群間に差が無かったが, 感染性の合併症(肺炎, 創感染, 腸炎, 縫合不全, 敗血症)はNoBT群で10例にみられ, AuBT群の17例より少なかった(p=0.017). 多変量解析で輸血が感染性合併症の危険因子であった. 術後のNK細胞活性はNoBT群では低下しなかったが, AuBT群で術前値に復くするまで3週間を要した. A群では術3ヶ月後も低値であった. 結語:胸部食道癌根治術おいて他家血輸血を回避することにより再発リスクの高い例における予後の向上が期待できる. 術後感染性合併症の予防には無輸血手術が望ましい. |
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ISSN: | 0546-1448 |