内リンパ嚢手術の再評価 -Thomsen論文の問題点

「はじめに」1970年代から1980年代初頭に盛んに行われていたメニエール病に対する内リンパ嚢手術であったが, 1981年にThomsenらが発表した論文1)2)で[内リンパ嚢手術はプラセボ効果に過ぎない]と批判したことを契機にして内リンパ嚢手術はやや下火になって行った経緯がある. Thomsenらは, メニエール病患者30名を2群に分けて二重盲検法でA (active)群15名には内リンパ嚢手術を行い, P (placebo)群15名には乳突削開術を行い, 1年後の効果判定の結果, 両群間には大差が無かったと結論を出している. 二重盲検法で2群間の手術効果を科学的に比較検定試験を行っているこ...

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Published inめまい平衡医学 Vol. 61; no. 6; pp. 435 - 445
Main Author 矢沢代四郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本めまい平衡医学会 01.12.2002
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ISSN0385-5716

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Summary:「はじめに」1970年代から1980年代初頭に盛んに行われていたメニエール病に対する内リンパ嚢手術であったが, 1981年にThomsenらが発表した論文1)2)で[内リンパ嚢手術はプラセボ効果に過ぎない]と批判したことを契機にして内リンパ嚢手術はやや下火になって行った経緯がある. Thomsenらは, メニエール病患者30名を2群に分けて二重盲検法でA (active)群15名には内リンパ嚢手術を行い, P (placebo)群15名には乳突削開術を行い, 1年後の効果判定の結果, 両群間には大差が無かったと結論を出している. 二重盲検法で2群間の手術効果を科学的に比較検定試験を行っていることからその説得力は大きく, この論文を契機として[内リンパ嚢手術はプラセボ効果に過ぎない]という批判が広まった. しかし, Thomsenらは当初から[メニエール病ではどのような治療を行っても60-80%の有効率がある. 従って内リンパ嚢手術も非特異的なプラセボ効果に違いない]とする前提のもとにこの研究を行っていることがその序文や考察から読みとることができる.
ISSN:0385-5716