傍腫瘍症候群として顕在化した好酸球性心筋炎の1例
「Abstract」症例71歳男性. 58歳時に好酸球性肺炎に罹患し, 末梢血好酸球数23100/mm3と著明な上昇を認めた. この際に左室駆出率36%(Teich法)と低下を認めたため, 心筋生検を含めて精査が実施されたが左室収縮能低下の原因は不明であった. その後も気管支喘息が寛解増悪を繰り返し, さらに好酸球増多症も持続したためプレドニゾロンの内服治療が継続された. 69歳頃からプレドニゾロン内服継続下においても好酸球増多症のコントロールが不良となった. 70歳時に胆管癌を発症して, 膵頭十二指腸切除術と術後の放射線治療が実施された. 71歳時に38℃台の発熱と全身倦怠感を主訴に救急外来...
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Published in | 心臓 Vol. 54; no. 4; pp. 512 - 523 |
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Main Authors | , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本心臓財団・日本循環器学会
15.04.2022
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ISSN | 0586-4488 |
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Summary: | 「Abstract」症例71歳男性. 58歳時に好酸球性肺炎に罹患し, 末梢血好酸球数23100/mm3と著明な上昇を認めた. この際に左室駆出率36%(Teich法)と低下を認めたため, 心筋生検を含めて精査が実施されたが左室収縮能低下の原因は不明であった. その後も気管支喘息が寛解増悪を繰り返し, さらに好酸球増多症も持続したためプレドニゾロンの内服治療が継続された. 69歳頃からプレドニゾロン内服継続下においても好酸球増多症のコントロールが不良となった. 70歳時に胆管癌を発症して, 膵頭十二指腸切除術と術後の放射線治療が実施された. 71歳時に38℃台の発熱と全身倦怠感を主訴に救急外来を受診された. この際, 末梢血好酸球数3100/mm3であった. 心臓超音波検査では心室壁の肥厚は認めなかったが, 左室の拡大と左室収縮能の高度低下(左室駆出率23%)を認めた. 強心薬を開始したが, 収縮期血圧70-80mmHg台のショック状態から離脱できなかったためIABPを挿入するとともに, 心筋生検を実施した. 心筋生検では, 心筋細胞間および間質内に好酸球の浸潤と脱顆粒が認められた. さらに心内膜内にも集簇性となった好酸球浸潤が認められた. ステロイドパルス療法実施後に血行動態は安定化して, 第10病日にIABPから離脱, 約1カ月の経過でカテコラミンからも離脱することができた. しかしその後,プレドニゾロンを15mg/dayまで減量したところ再び末梢血好酸球数が975/mm3と上昇傾向を示した. このため, IL-5阻害薬(ベンラリズマブ)の投与を開始した. プレドニゾロンとベンラリズマブの併用療法にて末梢血好酸球数は0/mm3の状態を維持できるようになった. 今回, 傍腫瘍症候群として顕在化した好酸球性心筋炎の1例を経験した. 本症例で経験した臨床経過は好酸球増多症を有する患者を診療する上で参考になると考えられたため, ここに報告させていただいた. |
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ISSN: | 0586-4488 |