原発性線毛機能不全症候群

要旨: 環境中の抗酸菌が吸入され, 肺内に定着して抗酸菌症を発症する際の宿主要因のひとつとして気道粘液線毛クリアランスの低下が考えられる. 線毛機能不全症候群(primary ciliary dyskinesia; PCD)は運動性繊毛の先天的障害に起因し, 上下気道症状を特徴とする. ここ10数年の遺伝子解析技術の進歩により, 50以上の原因遺伝子が報告されてきたが, わが国では十分認知されていない. 特に内臓逆位が見られない場合, 未診断や誤診の可能性が高い. 2019年にわれわれの手により明らかにされたDRC1遺伝子の大規模欠失は, 日本で診断されるPCD遺伝子異常の半数近くを占めている...

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Published in結核 Vol. 99; no. 7; pp. 221 - 226
Main Authors 慶長直人, 土方美奈子, 伊藤優志, 森本耕三
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本結核・非結核性抗酸菌症学会 15.11.2024
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ISSN0022-9776

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Summary:要旨: 環境中の抗酸菌が吸入され, 肺内に定着して抗酸菌症を発症する際の宿主要因のひとつとして気道粘液線毛クリアランスの低下が考えられる. 線毛機能不全症候群(primary ciliary dyskinesia; PCD)は運動性繊毛の先天的障害に起因し, 上下気道症状を特徴とする. ここ10数年の遺伝子解析技術の進歩により, 50以上の原因遺伝子が報告されてきたが, わが国では十分認知されていない. 特に内臓逆位が見られない場合, 未診断や誤診の可能性が高い. 2019年にわれわれの手により明らかにされたDRC1遺伝子の大規模欠失は, 日本で診断されるPCD遺伝子異常の半数近くを占めているが, 内臓逆位が見られず, 電子顕微鏡検査で明らかな異常を指摘しにくい. PCDは小児慢性特定疾病のひとつであるが, 2023年, 厚生労働省の調査研究班(代表 須田隆文教授)より, 客観性のある診断基準に基づく要望書が提出され, 2024年4月に340番目の指定難病として正式に認可された. 特に成人で高額な新規治療法を導入する場合, 医療費助成制度の意義は大きく, 確定診断例が増加することで国際共同治験へも遅滞なく参加できるものと期待される.
ISSN:0022-9776