甲状腺癌手術における反回神経麻痺の予後

「はじめに」甲状腺手術における合併症の一つに反回神経損傷があり, その損傷による神経麻痺は, 一側であれば嗄声, 誤嚥を, 両側であれば呼吸困難をもたらしうる. 癌の浸潤により神経の温存が不可能な場合は別として, 愛護的操作をもって神経を温存しえたと考えられた症例においても, 術後に声帯麻痺が生ずることは稀ながら存在する. ただし, 神経温存ができた症例では, 術後の声帯麻痺は, 通常一過性であるとされているが, 中に術後1年以上経過しても声帯の可動性が回復しない永続性麻痺が存在するのが実情であろうと思われる. 今回, 神経を温存したにもかかわらず, 術後声帯麻痺を認めた症例が, どの時点で声...

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Published in喉頭 Vol. 23; no. 1; pp. 30 - 32
Main Authors 谷山岳司, 荒木真美佳, 福喜多晃平, 福家智仁, 山田弘之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本喉頭科学会 01.06.2011
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Summary:「はじめに」甲状腺手術における合併症の一つに反回神経損傷があり, その損傷による神経麻痺は, 一側であれば嗄声, 誤嚥を, 両側であれば呼吸困難をもたらしうる. 癌の浸潤により神経の温存が不可能な場合は別として, 愛護的操作をもって神経を温存しえたと考えられた症例においても, 術後に声帯麻痺が生ずることは稀ながら存在する. ただし, 神経温存ができた症例では, 術後の声帯麻痺は, 通常一過性であるとされているが, 中に術後1年以上経過しても声帯の可動性が回復しない永続性麻痺が存在するのが実情であろうと思われる. 今回, 神経を温存したにもかかわらず, 術後声帯麻痺を認めた症例が, どの時点で声帯の可動性を認めるのか, どの時点まで可動性回復が期待できるのかを検討した. これによって, どの時点で永続性麻痺と判定し, 音声改善手術に踏み切るのかについての答えを求めたい. 「対象および方法」2006年4月から2009年3月までの3年間に, 当科で手術を行った術前に声帯麻痺のない甲状腺癌初回手術例117例のうち, 反回神経非切除106例を対象とし, 麻痺の発生率, 麻痺症例での改善率, 改善までの期間を検討した.
ISSN:0915-6127