両側同時鼓室形成術の検討

「はじめに」従来, 両側慢性中耳炎症例に対しては, 手術による聴力低下の可能性を考慮して, 非良聴耳に対して先行して手術を行い, 手術耳の聴力改善を確認した後に対側耳の手術を行うことが一般的であった1). これは, Quality of lifeを手術前よりも低下させないという意味で妥当な方法と考えられる. しかし, この方法では, 少なくとも2回の入院, 手術を要し, 患者側にとっての社会的, 経済的, 身体的負担が1回で済ませられる場合と比較して大きいものとなる. このような点から, 近年, 手術侵襲が少なく, 聴力低下の危険性の少ない接着法による鼓膜形成術2)を用いた両側鼓膜形成術や片側...

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Published inOtology Japan Vol. 18; no. 5; pp. 654 - 658
Main Authors 福島典之, 小野邦彦, 平位知久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本耳科学会 25.12.2008
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ISSN0917-2025

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Summary:「はじめに」従来, 両側慢性中耳炎症例に対しては, 手術による聴力低下の可能性を考慮して, 非良聴耳に対して先行して手術を行い, 手術耳の聴力改善を確認した後に対側耳の手術を行うことが一般的であった1). これは, Quality of lifeを手術前よりも低下させないという意味で妥当な方法と考えられる. しかし, この方法では, 少なくとも2回の入院, 手術を要し, 患者側にとっての社会的, 経済的, 身体的負担が1回で済ませられる場合と比較して大きいものとなる. このような点から, 近年, 手術侵襲が少なく, 聴力低下の危険性の少ない接着法による鼓膜形成術2)を用いた両側鼓膜形成術や片側鼓室形成術・他側鼓膜形成術などの両側同時手術の報告が散見されるようになった3)~7). 当科でもこれらの両側同時手術を行っていたが, 特殊な事情の2症例に両側同時鼓室形成術を行い, 特に問題なく経過し良好な結果を得る経験をした.
ISSN:0917-2025