他人血輸血を拒否した患者に本人の意思でABO血液型の異なる親族の血液を輸血した例

他人血(日赤血)を拒否している患者に, 患者本人(B型)の意思によりO型の親族の血液を輸血した症例を経験した. 患者は入院中に汎血球減少症が顕著となり輸血が必要となった. 当初, 患者は輸血を拒否していたが, 主治医らの粘り強い説得により, ABO同型の日赤血を数回輸血した. その後, 輸血用血液からAIDSが感染したとの報道や患者の精神状態が原因で, 強い輸血拒否を示した. 主治医と輸血部で検討の結果, 患者本人と長男の意思を尊重し, 長男から400ml採血してMAP濃厚赤血球を調整し, 放射線照射後輸血を行った. さらに4単位の輸血が必要と考えられたので, 臨床上やむおえず, 家族からの書...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 43; no. 6; p. 1033
Main Authors 工藤善範, 松田仁志, 田村眞, 飯沼一宇
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.12.1997
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Summary:他人血(日赤血)を拒否している患者に, 患者本人(B型)の意思によりO型の親族の血液を輸血した症例を経験した. 患者は入院中に汎血球減少症が顕著となり輸血が必要となった. 当初, 患者は輸血を拒否していたが, 主治医らの粘り強い説得により, ABO同型の日赤血を数回輸血した. その後, 輸血用血液からAIDSが感染したとの報道や患者の精神状態が原因で, 強い輸血拒否を示した. 主治医と輸血部で検討の結果, 患者本人と長男の意思を尊重し, 長男から400ml採血してMAP濃厚赤血球を調整し, 放射線照射後輸血を行った. さらに4単位の輸血が必要と考えられたので, 臨床上やむおえず, 家族からの書面による同意を得たうえで, B型日赤血を輸血し, RBCおよびHbの非常な低値を脱した. 今回の事例における問題点として患者本人の同意を得ずにB型日赤血を輸血したことが上げられる. 輸血拒否を示す患者や家族に対する1つの対応を報告した.
ISSN:0546-1448