髄膜癌腫症と横断性脊髄障害を呈した腫瘤形成性形質細胞腫の1剖検例

29才,男性. 27才の時に肩甲部痛,背部・腰部痛とともに舌の右への偏位に気付いた.その後,胸部絞扼感,乾性咳嗽,下肢脱力感が出現したため,入院.胸部X線写真で多量の胸水と左肺に円形陰影を認めた.胸部CTで左後部胸腔内の腫瘤と判明した.胸水細胞診にて異型形質細胞を証明した.血清M成分は認めず血中IgA, IgG, IgM, IgE, IgDは全て低値であつたが,尿中にはκ型のBence Jones蛋白を認めた.髄液蛋白の著明増加も認めた.舌は右へ偏位し線維束攣縮を認めた.入院後数日にしてTh5以下の横断性脊髄障害を来した.入院2カ月後には項部硬直も出現し,腫瘤形成性形質細胞腫による横断性脊髄障...

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Published in日本内科学会雑誌 Vol. 74; no. 9; pp. 1276 - 1282
Main Authors 丸山, 博司, 舟川, 格, 高柳, 哲也, 高橋, 精一, 本田, 仁, 小長谷, 正明, 真野, 行生, 榊原, 敏正, 堀川, 博誠, 小長谷, 陽子, 寺本, 純, 磯部, 敬
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本内科学会 10.09.1985
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ISSN0021-5384
1883-2083
DOI10.2169/naika.74.1276

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Summary:29才,男性. 27才の時に肩甲部痛,背部・腰部痛とともに舌の右への偏位に気付いた.その後,胸部絞扼感,乾性咳嗽,下肢脱力感が出現したため,入院.胸部X線写真で多量の胸水と左肺に円形陰影を認めた.胸部CTで左後部胸腔内の腫瘤と判明した.胸水細胞診にて異型形質細胞を証明した.血清M成分は認めず血中IgA, IgG, IgM, IgE, IgDは全て低値であつたが,尿中にはκ型のBence Jones蛋白を認めた.髄液蛋白の著明増加も認めた.舌は右へ偏位し線維束攣縮を認めた.入院後数日にしてTh5以下の横断性脊髄障害を来した.入院2カ月後には項部硬直も出現し,腫瘤形成性形質細胞腫による横断性脊髄障害と髄膜癌腫症と考え,放射線治療,薬物治療を行なつたが,全経過14カ月で死亡した.剖検では肉眼的には脳硬膜・軟膜には肥厚や混濁を認めず,頭蓋底部にも異常を認めなかつた.脊髄はTh5のレベルで腫瘤により圧迫されており,その部分より下約10cmにわたつて脊髄は軟らかく細くなつていた.光顕的には髄膜癌腫症と腫瘤の脊髄への圧迫壊死が判明した.舌下神経麻痺を初発とする髄膜癌腫症はまれであり,また過去に腫瘤形成性形質細胞腫による髄膜癌腫症と横断性脊髄症状の報告はない.
ISSN:0021-5384
1883-2083
DOI:10.2169/naika.74.1276