待機的手術における術式別血液準備量の比較検討

待機的手術における血液準備量の決定にSBOE(外科的手術血液準備計算法)があるが, この計算には患者の循環血液量や術前Hb値といった患者別のファクターが含まれており, 患者固有の血液準備量を算出するのに有用とされている. 今回SBOE導入に向けて, (1)実際の血液準備量(2)MSBOS(3)SBOEでそれぞれC/Tを算出し, 比較検討したので報告する. 【方法】2001年11月より手術準備血液のオーダー時に体重, 術前Hb値, 術後維持Hb値を記入してもらい, SBOEを算出した. 通常SBOEには輸血を開始するHb値(7~8g/dl)を用いるが, 今回は術後に維持したい患者のHb値を用いて...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 49; no. 2; p. 237
Main Authors 山口陽子, 倉島志保, 村上美知, 杉本達哉, 武井美恵子, 小林信昌, 板垣浩行, 中塩屋千絵, 土田文子, 兵藤理, 福澤由紀子, 加藤俊一, 岸賢治, 鈴木利保, 福山東雄, 西山純一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.05.2003
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ISSN0546-1448

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Summary:待機的手術における血液準備量の決定にSBOE(外科的手術血液準備計算法)があるが, この計算には患者の循環血液量や術前Hb値といった患者別のファクターが含まれており, 患者固有の血液準備量を算出するのに有用とされている. 今回SBOE導入に向けて, (1)実際の血液準備量(2)MSBOS(3)SBOEでそれぞれC/Tを算出し, 比較検討したので報告する. 【方法】2001年11月より手術準備血液のオーダー時に体重, 術前Hb値, 術後維持Hb値を記入してもらい, SBOEを算出した. 通常SBOEには輸血を開始するHb値(7~8g/dl)を用いるが, 今回は術後に維持したい患者のHb値を用いてSBOEを算出した. 【結果】手術時に血液の準備が必要となる術式は肝切除術(38例), 膵頭十二指腸切除術(16例), 腹会陰式直腸離断術(6例), 及び冠動脈バイパス術(10例), 人工血管置換術(14例), 人工弁置換術等の心臓血1管外科の手術時であり, その他はT&Sでの対応が可能と思われた. 肝切除術は平均出血量1491ml, 術中輸血率21.1%, C/Tは(1)12.2(2)10.2(3)2.5であった. 以下同様に膵頭十二指腸切除術では2337ml, 25.0%, C/T(1)15.3(2)12.0(3)4.6, 腹会陰式直腸離断術では1785ml, 50.0%, C/T(1)2.1(2)3.5(3)1.4, 冠動脈バイパス術では1715ml, 80.0%, C/T(1)1.9(2)1.3(3)0.8, 人工血管置換術(腹部大動脈瘤)では1777mL28.6%, C/T(1)6.2(2)7.6(3)4.2であった. 【考察】SBOEはC/Tを減少させ, 待機的手術における血液準備量を適正に算出する有用な方法である一方, 術中輸血量がSBOEを上回った症例もあり, 全ての術式への適応は困難であると思われた. C/Tの減少と患者の安全性の確保をバランスよく保つため, 輸血開始トリガーの設定, 平均出血量などは定期的に見直し, それぞれの術式に応じた運用を行う必要があると思われた.
ISSN:0546-1448