長距離トラック運転を契機に難治性肺血栓塞栓症を発症した若年者の1例

長時間の運転による座位保持が原因となり, 下肢深部静脈血栓症および肺血栓塞栓症をきたした症例を報告する. 症例は30歳男性. 平成13年5月4日滋賀県から宮崎県まで12時間以上連続してトラック運転を行ったが, その途中から胸背部痛呼吸困難喀血を認め, 本院救急外来を受診した. 心エコーにて右室拡大, 三尖弁逆流を認め, 右心カテーテル検査にて肺動脈圧61/27mmHgと肺高血圧を認めた. 肺血流シンチで両側肺野に多発性欠損像を認め, 左下肢深部静脈血栓症も認めたことより, 肺血栓塞栓症と診断した. 厳重な血栓溶解療法抗凝固療法を行い経過をみたが, 下肢血栓はさらに拡大傾向を認めた. そのため,...

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Published in心臓 Vol. 35; no. 7; pp. 527 - 530
Main Authors 曽山明子, 原正剛, 澤西高佳, 白川喜一, 下山寿, 森川雅, 富岡宣良, 渡辺裕, 廣瀬邦彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 丸善 15.07.2003
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ISSN0586-4488

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Summary:長時間の運転による座位保持が原因となり, 下肢深部静脈血栓症および肺血栓塞栓症をきたした症例を報告する. 症例は30歳男性. 平成13年5月4日滋賀県から宮崎県まで12時間以上連続してトラック運転を行ったが, その途中から胸背部痛呼吸困難喀血を認め, 本院救急外来を受診した. 心エコーにて右室拡大, 三尖弁逆流を認め, 右心カテーテル検査にて肺動脈圧61/27mmHgと肺高血圧を認めた. 肺血流シンチで両側肺野に多発性欠損像を認め, 左下肢深部静脈血栓症も認めたことより, 肺血栓塞栓症と診断した. 厳重な血栓溶解療法抗凝固療法を行い経過をみたが, 下肢血栓はさらに拡大傾向を認めた. そのため, 一時的下大静脈フィルターを留置の上, 左下肢深部静脈血栓に対し血栓吸引術を施行した. しかし, 血栓除去は困難であり, 血流改善を得ることはできなかった. 8日後再造影にて大量の下肢血栓残存を認めたため, 恒久的下大静脈フィルターを留置した. 近年エコノミークラス症候群が注目されているが, 本症例のような長距離運送業者に対しても注意する必要があると考え報告した.
ISSN:0586-4488