重症頭部外傷に対する低体温療法の検討
重症頭部外傷において, 急性期の脳浮腫・脳腫張に伴う頭蓋内圧上昇は, 多くの場合急激に進行し, 予後を大きく左右する. 従来の治療に加えて, 補助療法の一つとして低体温療法を施行した. 〔対象〕硬膜下血腫, 脳挫傷などで観血的加療および従来の加療にても頭蓋内圧の上昇を抑制しきれない症例で, 御家族の同意の得られた6症例(男性5例, 女性1例, 11歳~67歳, 平均24±22.7歳). 血行動態など維持できない場合, あるいは合併症などにより維持できないことが予想される場合は除いた. 〔方法〕1)低体温;体温は, 33±0.5度. Baxter社製体温維持装置RK-2000を用いた. 2)抗痙...
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Published in | 蘇生 Vol. 16; no. 3; p. 214 |
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Main Authors | , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本蘇生学会
01.09.1997
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ISSN | 0288-4348 |
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Summary: | 重症頭部外傷において, 急性期の脳浮腫・脳腫張に伴う頭蓋内圧上昇は, 多くの場合急激に進行し, 予後を大きく左右する. 従来の治療に加えて, 補助療法の一つとして低体温療法を施行した. 〔対象〕硬膜下血腫, 脳挫傷などで観血的加療および従来の加療にても頭蓋内圧の上昇を抑制しきれない症例で, 御家族の同意の得られた6症例(男性5例, 女性1例, 11歳~67歳, 平均24±22.7歳). 血行動態など維持できない場合, あるいは合併症などにより維持できないことが予想される場合は除いた. 〔方法〕1)低体温;体温は, 33±0.5度. Baxter社製体温維持装置RK-2000を用いた. 2)抗痙攣作用および頭蓋内圧低下などの目的でペントバルビタールを使用した. 導入(10時間)は4mg/kg/hr(小児6~8mg/kg/hr), 維持(その後)は1~2mg/kg/hr(小児2~3mg/kg/hr)で使用した. 3)その他, 軽度低炭酸ガス血症など従来よりの頭蓋内圧亢進症に対する加療は, 従来と同様に施行した. 〔モニター〕頭蓋内圧測定(クモ膜下カテーテル法), 脳表温, 直腸温, 動脈圧, Swan-Ganzカテーテル, 内頚静脈カテーテルなど留置した. 〔結果〕1)6症例の予後は, 1ヶ月後のGOS(Glasgow Outcome Scale)で, GR2例, MD2例, BD2例であった. 2)脳死に到らなかった4例のうち3例の亜急性期に肺炎に伴う敗血症が認められた. 〔結語〕1)従来の治療との併用で, 急性期の脳腫張をより抑制する傾向が認められた. 2)頭部外傷は, 術前の誤嚥など感染症をおこす可能性が高く, 早期よりの亜急性期での感染症対策が重要と思われた. |
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ISSN: | 0288-4348 |