静注用グロブリン製剤における抗菌力価

【目的】静注用免疫グロブリン(以下IVIGと略す)は細菌感染に対して補体や食細胞と協力して殺菌作用を示し, 重症感染症においては抗生物質と共に用いられている. しかし, 近年特に薬剤耐性の問題が深刻化しつつあることから, IVIGを抗生物質とは独立して, 本質的な使用意義を明らかにすべき時期にあると考えられる. 本研究ではこのような機作解明の一端として, 種々の細菌菌株を用いてIVIGの抗体価と感染防御効果の相関性について検討した. 【材料と方法】IVIGはVeno globulin IH(ミドリ十字)を用いた. E. coli, P. aeruginosa, S. aureusとK. pne...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 39; no. 2; p. 463
Main Authors 中江孝, 永井仁志, 中島常隆, 渡辺正弘, 横山和正
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.05.1993
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ISSN0546-1448

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Summary:【目的】静注用免疫グロブリン(以下IVIGと略す)は細菌感染に対して補体や食細胞と協力して殺菌作用を示し, 重症感染症においては抗生物質と共に用いられている. しかし, 近年特に薬剤耐性の問題が深刻化しつつあることから, IVIGを抗生物質とは独立して, 本質的な使用意義を明らかにすべき時期にあると考えられる. 本研究ではこのような機作解明の一端として, 種々の細菌菌株を用いてIVIGの抗体価と感染防御効果の相関性について検討した. 【材料と方法】IVIGはVeno globulin IH(ミドリ十字)を用いた. E. coli, P. aeruginosa, S. aureusとK. pneumoniaeの4菌種各80株は近年の臨床分離株を用い心抗体価は0.5%ホルマリンで不活性化した菌体を抗原として用い, ELISAにて測定した. MRSA上のプロテインA量はマイクロプレートに吸着した菌体に対してモノクローナル抗体を用いて測定した. 感染実験はICRマウス(雄性, 5週令)に対し腹腔内感染と同時にIVIGを静脈内に投与して, 7日目の生存率より薬剤の効果を判定した. 【結果】E. coli, P. aeruginosaとK. pneumoniaeの3菌種に対してIVIGの抗体価はほぼ25,600を中心として正規分布した. これらの各菌株のマウスでの感染防御効果は, 抗体価が6,400以下では25kmg/kgのIVIGを投与しても十分な効果が得られなかったが, 高い抗体価を示した菌株に対しては低い投与量で高い効力が認められる傾向を示した. S. aureusは他の菌種に比べて400,000-1,280,000と著しく高い抗体価を示したが, プロテインAを介した非特異反応の存在が示唆され, これを考慮した抗体価を比較したところ, 効力との相関性が認められた. 【結語】今回の結果から, 抗体の細菌に対する効力は抗原抗体反応を基礎とすることが確認され, この結合の強弱が細胞性免疫の誘導など, 特異免疫系と深い関わりを持つことが示唆された.
ISSN:0546-1448