抗SMANCS抗体と溶血反応について
種々の薬剤抗体が原因となり, 免疫学的機序による赤血球の破壊が起こることは広く知られている今回, 我々は肝細胞癌治療剤であるSMANCSによる治療後, 一過性に溶血所見を呈した患者血清中から抗SMANCS抗体を検出したそこで他のSMANCS治療患者23名についても調査し, 抗SMANCS抗体と溶血反応について検討した. 方法:各種薬剤をPBSで10-5M, 10-6M, 10-7Mの濃度に調整し抗薬剤抗体の検査を行った. また, 抗SMANCS抗体は, SMANCS治療患者24名について溶血所見とともに調査したさらにSMANCSによる抗SMANCS抗体の抑制試験やFlow Cytometryに...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 43; no. 2; p. 250 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
01.04.1997
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ISSN | 0546-1448 |
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Summary: | 種々の薬剤抗体が原因となり, 免疫学的機序による赤血球の破壊が起こることは広く知られている今回, 我々は肝細胞癌治療剤であるSMANCSによる治療後, 一過性に溶血所見を呈した患者血清中から抗SMANCS抗体を検出したそこで他のSMANCS治療患者23名についても調査し, 抗SMANCS抗体と溶血反応について検討した. 方法:各種薬剤をPBSで10-5M, 10-6M, 10-7Mの濃度に調整し抗薬剤抗体の検査を行った. また, 抗SMANCS抗体は, SMANCS治療患者24名について溶血所見とともに調査したさらにSMANCSによる抗SMANCS抗体の抑制試験やFlow CytometryによるSMANCSの赤血球への吸着状況などについても検討した 結果:抗SMANCS抗体陽性の患者は19/24(79.1%)で1回のみの治療でも15/19(78.9%)と高い抗体陽性率であった抗SMANCS抗体の力価は2~4096倍であったが, SMANCS治療後に明かな溶血所見を呈した患者は発端となった症例のみであったまた, SMANCSによる抗SMANCS抗体の抑制試験は陽性であったさらに各濃度のSMANCSがどの程度赤血球へ吸着するかをFlow Cytometryで見た結果, controlである抗D抗体と比較し10-7Mの時はnegative controlとほぼ同等の強さであった. また全血の状態でSMANCSを赤血球へ吸着させた場合, 洗滌した赤血球への吸着に比べ明らかに劣っていた. まとめ:今回, SMANCS治療により一過性の溶血所見を認めた患者と, その他23名のSMANCS治療患者の抗SMANCS抗体を調べた結果, SMANCSが極めて高い免疫原性を有することが判明した. しかし溶血所見を認めたのは今回の症例のみであった. この原因として, SMANCSの血中濃度が極めて低いことと, 血漿成分力もMANCSの赤血球への吸着に対し, 抑制的に働くことに起因していると考えられた. |
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ISSN: | 0546-1448 |