シルデナフィル服用によると思われた心室細動の1症例

シルデナフィル(バイアグラ)は, 勃起不全治療剤として本邦でも1999年3月より認可され使用されてきた. 投与に際し, 様々な注意点, 副作用があるが, 最も重要なものとして心筋梗塞, 致死性不整脈, 心臓に起因する突然死などが挙げられる. 今回我々は, 心血管系のリスクファクターを有しない若年男性で, シルデナフィル服用によって心室細動(Vf)を起こしたと思われた症例を経験したので若干の考察を加え報告する. 症例は, 18才男性で, 既往歴に特記すべきものはなかった. 突然死, 重篤な不整脈などの家族歴はなかった. 本年2月, 友人宅にて喫煙中気分不良を訴えた直後, 意識消失. 脈拍を触れず...

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Published in蘇生 Vol. 20; no. 3; p. 254
Main Authors 松岡義和, 高島武換, 小野剛, 松田力哉, 瀬戸甲蔵
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 12.09.2001
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ISSN0288-4348

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Summary:シルデナフィル(バイアグラ)は, 勃起不全治療剤として本邦でも1999年3月より認可され使用されてきた. 投与に際し, 様々な注意点, 副作用があるが, 最も重要なものとして心筋梗塞, 致死性不整脈, 心臓に起因する突然死などが挙げられる. 今回我々は, 心血管系のリスクファクターを有しない若年男性で, シルデナフィル服用によって心室細動(Vf)を起こしたと思われた症例を経験したので若干の考察を加え報告する. 症例は, 18才男性で, 既往歴に特記すべきものはなかった. 突然死, 重篤な不整脈などの家族歴はなかった. 本年2月, 友人宅にて喫煙中気分不良を訴えた直後, 意識消失. 脈拍を触れず友人により約20分間心マッサージ施行するが反応なく, 救急隊到着時Vfを確認の後, DC2回施行し自己心拍再開. 当院来院. 来院時, BP120-55mmHg HR120/分洞性調律. 呼吸30/分浅く不整. SpO2 94%(マスク51/分). 意識はJCS-300, GCS6点(E1V2M3). 直ちに気管内挿管を行い, ICUに搬入し, 全身管理を行ったが意識はJCS30-100までで固定した. 来院時の血清よりシルデナフィルが検出された. 服用時刻, 量は不明であった. 意識消失の原因検索の結果, 中枢神経系に起因するものは否定され, Vfによるものと思われた. 若年においてVfをきたす疾患としては, Brmgada症候群, QT延長症候群, 薬物中毒, これら以外の特発性Vfなどが挙げられる. 本例では前2者は否定的であったため薬物使用を疑った. シルデナフィルはニトロ類を服用する患者においては過度の血圧低下を招くため, 心筋梗塞や不整脈の出現を招くことがある. また喫煙, 性行為を含めた運動負荷は心筋の酸素需給を悪化させることが知られている. 従って処方, 服用に際しては充分な注意が必要である. しかし実際には医師の診断を受けず違法に入手し内服するケースがあり発売以来問題となっている. 本例では特発性Vfの因子も完全には否定できないが, 喫煙, 性行為, シルデナフィルの相乗作用が誘因となった可能性がある. またこのようなケースでは病歴の聴取が困難であり診断に難渋した.
ISSN:0288-4348