両側股関節に発症した色素性絨毛結節性滑膜炎の一例

【目的】我々は, 非常にまれな両側股関節に発症した色素性絨毛結節性滑膜炎(以下PVS)の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する. 【症例】75歳女性, 主訴は右股関節痛. 約1年前より右股関節痛出現し徐々に増悪したため, H11.4.5当科初診となる. 入院時血液検査所見ではCRP4.5, 血沈1時間値118, ヘモグロビン9.3で炎症反応と貧血を認めたが, 白血球上昇や分核の左方移動は見られず熱発もなかった. 単純X線では関節裂隙の狭小化と臼蓋, 骨頭の骨破壊と硬化, 嚢胞形成を認めた. H11.6.24右THAを施行した. 関節内は赤褐色調の滑膜が絨毛状に増殖し, 血性の関節液を...

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Published in整形外科と災害外科 Vol. 50; no. 4; p. 1187
Main Authors 宮崎清, 寺田和正, 前田剛, 中山功一, 江崎幸雄, 石橋徹, 宮原寿明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 西日本整形・災害外科学会 25.09.2001
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Summary:【目的】我々は, 非常にまれな両側股関節に発症した色素性絨毛結節性滑膜炎(以下PVS)の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する. 【症例】75歳女性, 主訴は右股関節痛. 約1年前より右股関節痛出現し徐々に増悪したため, H11.4.5当科初診となる. 入院時血液検査所見ではCRP4.5, 血沈1時間値118, ヘモグロビン9.3で炎症反応と貧血を認めたが, 白血球上昇や分核の左方移動は見られず熱発もなかった. 単純X線では関節裂隙の狭小化と臼蓋, 骨頭の骨破壊と硬化, 嚢胞形成を認めた. H11.6.24右THAを施行した. 関節内は赤褐色調の滑膜が絨毛状に増殖し, 血性の関節液を認め, この時点でPVSを疑った. 滑膜は可及的に切除した. 病理組織像では滑膜は絨毛状に増殖し, ヘモジデリン含有細胞と多核巨細胞が認められ, PVSと診断された. その後右股関節痛は消失していたが, 術後4ケ月頃より左股関節痛が出現し, 単純X線では関節列隙の狭小化と臼蓋, 骨頭の骨破壊を認めるようになり, H12.4.18左THAを施行した. 術中所見も同様で, 病理組織もPVSであった. 【考察】PVSは単関節性で, その70~80%が膝関節に発生するといわれている. 本邦では50例の股関節発生例が報告されており, そのうち両側例は1例だけである. 尚, 海外では3例の両股発症例が報告されている. PVSでは単純X線像で嚢胞形成が先行することが多いとされており, 嚢胞形成を伴う関節炎様の所見を認め, 慢性関節リウマチなどが除外されれば, PVSも念頭に置く必要があると考えられた.
ISSN:0037-1033