水飲みテストの感度付加試験VFG下におけるクエン酸溶液飲みテスト

咳嗽誘発物質であるクエン酸を加えた水飲みテストを行えば誤嚥したときの咳嗽を誘発でき, テストの感度を上げることが可能ではないかと考え, 2つの実験を行った. はじめにクエン酸飲みテストを嚥下障害のない高齢者群を対象に行い頸部インピーダンス上の影響を観察した. 水を対象にした波形に比べ喉頭挙上に伴うインピーダンスの変動が大きいのと, 嚥下前段階のインピーダンスの上昇が特徴的で, 嚥下運動が大きくなる傾向を示した. 次に嚥下障害を持つ2症例に対しVFG(ビデオフルオログラフィー)下に水希釈造影剤を対照に5%クエン酸希釈造影剤の嚥下を観察した. 脳幹出血患者では水希釈造影剤が咽頭に流入してから喉頭挙...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 34; no. 12; p. 902
Main Authors 宇都山欣也, 関八州彦, 明石謙
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.12.1997
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ISSN0034-351X

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Summary:咳嗽誘発物質であるクエン酸を加えた水飲みテストを行えば誤嚥したときの咳嗽を誘発でき, テストの感度を上げることが可能ではないかと考え, 2つの実験を行った. はじめにクエン酸飲みテストを嚥下障害のない高齢者群を対象に行い頸部インピーダンス上の影響を観察した. 水を対象にした波形に比べ喉頭挙上に伴うインピーダンスの変動が大きいのと, 嚥下前段階のインピーダンスの上昇が特徴的で, 嚥下運動が大きくなる傾向を示した. 次に嚥下障害を持つ2症例に対しVFG(ビデオフルオログラフィー)下に水希釈造影剤を対照に5%クエン酸希釈造影剤の嚥下を観察した. 脳幹出血患者では水希釈造影剤が咽頭に流入してから喉頭挙上までに5.8秒かかり, さらに1回で嚥下しきれなかった造影剤が梨状窩から溢れ気管に誤嚥した. 同様にクエン酸では喉頭挙上まで0.2秒, 梨状窩から溢れた造影剤の声帯までの誤嚥を認めたが気管流入はなかった. 脳脊髄炎回復期患者ではクエン酸で連続した嚥下反射が誘発され, 誤嚥を生じにくい嚥下運動が観察された. 当初の方向性を維持するなら, 嚥下反射を誘発せず咳嗽反射を誘発するクエン酸濃度, もしくは他の化学物質が存在するかが課題として残り, クエン酸が嚥下反射を誘発するという結果からは嚥下における運動系の器質性障害の検査として, さらに嚥下訓練に応用出来るのではないかが示唆された.
ISSN:0034-351X