動物における実験的関節疼痛モデルの作製および疼痛の評価
従来の疼痛評価モデルは, 動物による仮性疼痛反応(屈曲反応, 逃避反応, 防御反応, 泣き声)を基にしているので, 動物に痛みを与えるという倫理的な問題や薬物の作用濃度閾値を正確に知ることができないという欠点があった. 本研究の目的は膝関節疼痛を量的に, 経時的に評価できる実験的疼痛モデルを確立し, 関節痛に対する薬物, 各種治療法の鎮痛活性評価ならびに作用機序や疼痛の病態生理機構の解明に寄与することにある. 【方法】 ラットを使用し上部頸髄レベルで脊髄切断を加えた. これらの処置後, 麻酔は停止し覚醒させ, 膝伸筋と屈筋に筋活動導出ワイヤー電極を設置した. 膝関節に疼痛を生じさせる目的で,...
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Published in | リハビリテーション医学 Vol. 28; no. 12; p. 1009 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本リハビリテーション医学会
01.12.1991
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ISSN | 0034-351X |
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Summary: | 従来の疼痛評価モデルは, 動物による仮性疼痛反応(屈曲反応, 逃避反応, 防御反応, 泣き声)を基にしているので, 動物に痛みを与えるという倫理的な問題や薬物の作用濃度閾値を正確に知ることができないという欠点があった. 本研究の目的は膝関節疼痛を量的に, 経時的に評価できる実験的疼痛モデルを確立し, 関節痛に対する薬物, 各種治療法の鎮痛活性評価ならびに作用機序や疼痛の病態生理機構の解明に寄与することにある. 【方法】 ラットを使用し上部頸髄レベルで脊髄切断を加えた. これらの処置後, 麻酔は停止し覚醒させ, 膝伸筋と屈筋に筋活動導出ワイヤー電極を設置した. 膝関節に疼痛を生じさせる目的で, 内因性発痛物質とされるペプタイドであるbradykinin (0.1~100 μg/ml)単独あるいはbradykinin+prostagrandin E_2 (*1μg/ml)を0.025 ml膝関節内に注入し, その際に生ずる筋活動様式の変化を記録し, その減衰時間を測定した. 【結果】 (1)記録された反応の基本的構成は, 注入側膝伸筋活動の抑制, 同側屈筋活動(内側屈筋)の促通であった. (2)bradykinin濃度と筋活動の持続時間に相関が認められた. (3)prostaglandin E_2 はbradykininにより引き起こされる筋活動の持続時間を延長していた. <質疑応答> 伊勢真樹(座長):関節内に皮膚と同じnociceptorが存在しているとお考えでしょうか. 山下泉:BKにて反応しキシロカインで筋活動が消失することから, 間接的に皮膚と同じ侵害受容器があると考えています. |
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ISSN: | 0034-351X |