手術用接着剤としてのヒト・フィブリン糊の研究

われわれは整形外科領域の臨床症例に, ヒト・フィブリン糊を手術用接着剤として使用してきた. 症例は神経, 腱, 骨の疾患に及んでおり, 種々の使用法を供覧する. 1)神経使用例 38歳, 男性, 「左正中神経損傷」昭和53年, ガラスにて左手関節部を切創し皮膚のみの縫合を受ける. その後左手の正中神経領域の指のしびれ感, 知覚低下が出現する. 手術時損傷部位で神経腫を形成していたので, その部分を切除し神経移植を施行した. 神経移植時に糊を使用した. 2)腱使用例 27歳, 男性, 「月状骨軟化症」壊死に陥った月状骨を摘出し, その空間に長掌筋腱を充填する. この時腱を月状骨の形に造形するのに...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 28; no. 3; pp. 312 - 313
Main Author 小林明正
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.06.1982
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ISSN0546-1448

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Summary:われわれは整形外科領域の臨床症例に, ヒト・フィブリン糊を手術用接着剤として使用してきた. 症例は神経, 腱, 骨の疾患に及んでおり, 種々の使用法を供覧する. 1)神経使用例 38歳, 男性, 「左正中神経損傷」昭和53年, ガラスにて左手関節部を切創し皮膚のみの縫合を受ける. その後左手の正中神経領域の指のしびれ感, 知覚低下が出現する. 手術時損傷部位で神経腫を形成していたので, その部分を切除し神経移植を施行した. 神経移植時に糊を使用した. 2)腱使用例 27歳, 男性, 「月状骨軟化症」壊死に陥った月状骨を摘出し, その空間に長掌筋腱を充填する. この時腱を月状骨の形に造形するのに糊を使用した. 3)骨使用例 42歳, 男性, 「左大腿部顆部骨折」オートバイ運転中に転倒し受傷した. 手術時骨折の整復を試みるも, 小骨片による欠損部位が生じた. この小骨片を金属を使用して整復をすることが困難であったため, 糊を使用して接着した.
ISSN:0546-1448