顎口腔領域異物のX線写真的観察
顎口腔領域は, 歯科治療等による口腔領域特有の異物の迷入の他に, 顔面領域は衣服に覆われていないこともあり, 事故や災害による異物迷入の門戸となりやすいと考えられる. そこで今回我々は, 顎口腔領域のX線写真上で異物と診断された症例について観察, 検討を行った. 対象としたのは, 平成5年1月から平成7年12月までの3年間に岡山大学歯学部附属病院を受診し, 口外法X線写真撮影を行った11,779例中, 異物の認められた62症例である. また同様に昭和57年から昭和63年までの10,875例中122例を対象とした過去の結果との比較も行った. 異物の発見率は, 今回の観察では0.53%で男女差はみ...
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Published in | 歯科放射線 Vol. 36; no. 2; p. 118 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本歯科放射線学会
30.06.1996
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ISSN | 0389-9705 |
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Summary: | 顎口腔領域は, 歯科治療等による口腔領域特有の異物の迷入の他に, 顔面領域は衣服に覆われていないこともあり, 事故や災害による異物迷入の門戸となりやすいと考えられる. そこで今回我々は, 顎口腔領域のX線写真上で異物と診断された症例について観察, 検討を行った. 対象としたのは, 平成5年1月から平成7年12月までの3年間に岡山大学歯学部附属病院を受診し, 口外法X線写真撮影を行った11,779例中, 異物の認められた62症例である. また同様に昭和57年から昭和63年までの10,875例中122例を対象とした過去の結果との比較も行った. 異物の発見率は, 今回の観察では0.53%で男女差はみられず, 過去の観察では1.12%であったが, 男女差については不明であった. 今回の62症例のうち初診時に異物に関する何らかの主訴をもつものは, 17例(27.4%), S57~S63では32例(26.2%)でありほぼ同様の結果となった. 異物の種類では, 根管充填剤が最も多く23例みられた. 次いで器具6例, 金属修復物4例, 歯と造影剤が2例であり, 不明のものが25例みられた. 年齢は, 歯科保存処置をうける機会の多くなる20歳代から60歳代にかけて多くみられた. 異物迷入の成因は, 医原性によるものが46例(69%)を占め, なかでも根管治療によるものが26例と最も多くみられた. 迷入部位では, 下顎骨歯槽歯肉部が最も多く36例(54%)であり, 左右差はH5~H7, S57~S63ともにみられなかった. 臨床症状は自発痛が最も多かったが, X線写真上で偶然異物が発見された症例のほとんどは, 全く症状がみられなかった. 異物迷入から初診までの異物滞留期間は, H5~H7では1年以上のものが最も多く, S57~S63では1週間以内のものが最も多かった. また, 症状のなかったものでは異物迷入からの期間がはっきりせず不明なものがほとんどであった. |
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ISSN: | 0389-9705 |