インスリンで誘導されるAP-1転写活性に対するmeninの作用
【目的】MEN1遺伝子翻訳産物meninは, AP-1転写因子JunDと結合してその転写活性を抑制し, またRasによる腫瘍形成に対しても抑制的に作用する. しかしながらこれらの分子機構や生理的意義はよく分かっていない. 私達はmeninの腫瘍抑制因子としての機能を明らかにする目的で, Ras刺激伝達系を介して誘導されたAP-1活性に対するmeninの影響を検討した. 【方法】インスリン受容体発現細胞株であるCHO-IRにリン酸カルシウム法を用いてmenin発現ベクターを導入し, 細胞を100nMインスリンで刺激した際のAP-1活性をルシフェラーゼアッセイにより検討した. 【結果】4時間のイン...
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Published in | 家族性腫瘍 Vol. 1; no. 2; p. 26 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
家族性腫瘍研究会
15.05.2001
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ISSN | 1346-1052 |
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Summary: | 【目的】MEN1遺伝子翻訳産物meninは, AP-1転写因子JunDと結合してその転写活性を抑制し, またRasによる腫瘍形成に対しても抑制的に作用する. しかしながらこれらの分子機構や生理的意義はよく分かっていない. 私達はmeninの腫瘍抑制因子としての機能を明らかにする目的で, Ras刺激伝達系を介して誘導されたAP-1活性に対するmeninの影響を検討した. 【方法】インスリン受容体発現細胞株であるCHO-IRにリン酸カルシウム法を用いてmenin発現ベクターを導入し, 細胞を100nMインスリンで刺激した際のAP-1活性をルシフェラーゼアッセイにより検討した. 【結果】4時間のインスリン刺激でAP-1活性は約3倍に上昇した. この活性上昇にはc-Jun, JunB, c-Fosの発現誘導を伴うがsupershift assayでの検討ではJunBはAP-1 siteに結合せず, 主にc-Junとc-Fosが関与していると考えられた. ここにmeninを発現させるとインスリンによる, AP-1活性は強力に抑制され, さらにc-Fosの発現も転写レベルで抑制された. 他のAP-1蛋白の発現は変化しなかった. 細胞をMAPKK阻害剤であるPD98059存在下で培養してc-Fos誘導を阻害するとAP-1活性は強く抑制され, c-Fosが活性誘導に必須であることが示された. c-Fosを強制発現させるとPD98059存在下でもAP-1活性は回復したが, これもmeninによって強く抑制された. 変異meninによる検討ではmeninのc-Fos発現抑制能はJunD結合能やAP-1転写抑制能とは相関しなかった. 【結論】インスリンによるAP-1活性誘導は主にc-Jun/c-Fosが担っている. Meninはc-Jun/c-Fosによる, AP-1転写活性の抑制とc-Fosの発現抑制という二つの機序によってCHO-IRにおけるAP-1活性を制御しており, この二つの抑制機構は独立した機能ドメインによって制御されている可能性がある. |
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ISSN: | 1346-1052 |