RT-PCR法による末梢血幹細胞への白血病細胞混入の検討

化学療法後の造血回復期には末梢血中の造血前駆細胞が増加しおり, これらを超大量化学療法後の造血救済に利用する自己末梢血幹細胞移植術が広く行われてきている. そして自家骨髄移植より有利な点の1つとして, 末梢血幹細胞の方が骨髄単核細胞に比べて白血病細胞の混入が少ないことが期待される. 我々は寛解期のPh陽性ALL3例, Ph陽性AML1例, APL2例を対象とし, 強化療法後に採取した末梢血単核球と同時期の骨髄単核球への白血病細胞の混入の有無をRT-PCR法で検討した. 末梢血単核球と骨髄単核球よりAGPC法でRNAを抽出し, anti-sense primerを用いてMMLV-RTでcDNAを...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 39; no. 2; p. 532
Main Authors 衛藤徹也, 原田直樹, 稲葉頒一, 長藤宏司, 高松泰, 原田実根, 仁保喜之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.05.1993
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ISSN0546-1448

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Summary:化学療法後の造血回復期には末梢血中の造血前駆細胞が増加しおり, これらを超大量化学療法後の造血救済に利用する自己末梢血幹細胞移植術が広く行われてきている. そして自家骨髄移植より有利な点の1つとして, 末梢血幹細胞の方が骨髄単核細胞に比べて白血病細胞の混入が少ないことが期待される. 我々は寛解期のPh陽性ALL3例, Ph陽性AML1例, APL2例を対象とし, 強化療法後に採取した末梢血単核球と同時期の骨髄単核球への白血病細胞の混入の有無をRT-PCR法で検討した. 末梢血単核球と骨髄単核球よりAGPC法でRNAを抽出し, anti-sense primerを用いてMMLV-RTでcDNAを作成しTaq polymeraseを用いて2step PCRを行った. その結果Ph陽性ALL2例, Ph陽性AML1例, APL1例では, 末梢血および骨髄の両方で白血病細胞の混入が検出された. Ph陽性ALL1例では両者とも陰性, APL1例では骨髄壊死を合併したため骨髄の評価は不能であったが末梢血は陰性だった. 今回の検討では末梢血幹細胞の方が骨髄単核球に比べて白血病細胞の混入が少ないという結果は得られなかった. 採取した末梢血幹細胞中に混入した白血病細胞が再発に関係するか否かは明らかでないが, 白血病細胞の混入が少ない末梢血幹細胞を得るためには採取時は深い寛解状態にあることが望ましい.
ISSN:0546-1448