人工心肺を使用する心臓手術時の血中エンドトキシン値の変化
エンドトキシン(ET)は, 通常でも腸管より吸収されて, 門脈血中には存在すると言われているが, 肝臓のクッペル細胞などに貪食されるので, 動脈血中濃度は非常に低い. 今回は, 長時間で, 侵襲の大きい一般外科手術および人工心肺を使用する心臓外科手術における血中ET値を測定し, 上昇の有無について検討した. <症例および方法>長時間で, 侵襲の大きい外科系の手術および心臓外科手術を受ける患者を対象とした. 一般外科手術では, 術中2~3回, 心臓外科手術では, 術中の, 人工心肺前, 中, 後に, 動脈血採血を行った. また, 人工心肺のプライミング液および冷却心停止液を採取し,...
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Published in | 蘇生 Vol. 11; p. 79 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本蘇生学会
01.04.1993
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ISSN | 0288-4348 |
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Summary: | エンドトキシン(ET)は, 通常でも腸管より吸収されて, 門脈血中には存在すると言われているが, 肝臓のクッペル細胞などに貪食されるので, 動脈血中濃度は非常に低い. 今回は, 長時間で, 侵襲の大きい一般外科手術および人工心肺を使用する心臓外科手術における血中ET値を測定し, 上昇の有無について検討した. <症例および方法>長時間で, 侵襲の大きい外科系の手術および心臓外科手術を受ける患者を対象とした. 一般外科手術では, 術中2~3回, 心臓外科手術では, 術中の, 人工心肺前, 中, 後に, 動脈血採血を行った. また, 人工心肺のプライミング液および冷却心停止液を採取し, 血液と共に, 測定まで-70℃で保存した. 血液および液のET値測定は, 合成基質法によるリムルステスト(Endospecy, 生化学工業)で行った. 血液は, 測定前に, 硝酸含有・トライトンX-100で前処理を行った. <結果>一般外科手術と, 心臓外科手術の人工心肺前のエンドトキシン値は, 非常に低値を示し, 有意差はなかった. 人工心肺・大動脈遮断中のET値(5.4±0.7pg/ml)は, 人工心肺前値(3.0+0.6pg/ml)に比較し, 有意に上昇した. プライミング液および冷却心停止液のET値は, それぞれ10.8±2.5pg/ml, 117.3±2.6pg/mlであった. <考察および結論>一般外科手術においては, 侵襲が大きい, 出血量が多いなどの状況下でも, ET値が非常に低値を示した. これは, たとえ腸管からのtranslocationがあったとしても, クッペル細胞などの貪食能が保たれているからと思われた. 心臓外科手術の人工心肺・大動脈遮断中にET値が上昇した理由としては, 腸管からのETのtranslocation, クッペル細胞などの貪食能の低下, 灌流液等の汚染などが考えられた. 本研究では, 少なくとも, 冷却心停止液の汚染はあると思われ, 厳重な管理が必要と考えられた. |
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ISSN: | 0288-4348 |