全脳虚血症例に対する低体温療法の検討

心肺停止などの全脳虚血後におこる蘇生後脳症については, いわゆる治療法に乏しい. 従来の治療に加えて, 補助療法の一つとして低体温療法を施行した. 〔対象〕心肺停止などにより全脳虚血状態となり, 蘇生後少なくとも2時間以上深昏睡状態が続き, 御家族の同意の得られた5症例(男性5例, 1歳~64歳, 平均35.4±24.2歳). 血行動態など維持できない場合, あるいは合併症などにより維持できないことが予想される場合は除いた. 〔方法〕1)低体温;体温は, 33±0.5度. Baxter社製体温維持装置RK-2000を用いた. 2)抗痙攣作用および頭蓋内圧低下などの目的でペントバルビタールを使用...

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Published in蘇生 Vol. 16; no. 3; p. 214
Main Authors 石井健, 白土瑞枝, 関口雅, 内野滋彦, 藤田正人, 後藤幸子, 宇野幸彦, 福家伸夫, 森田茂穂
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 01.09.1997
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ISSN0288-4348

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Summary:心肺停止などの全脳虚血後におこる蘇生後脳症については, いわゆる治療法に乏しい. 従来の治療に加えて, 補助療法の一つとして低体温療法を施行した. 〔対象〕心肺停止などにより全脳虚血状態となり, 蘇生後少なくとも2時間以上深昏睡状態が続き, 御家族の同意の得られた5症例(男性5例, 1歳~64歳, 平均35.4±24.2歳). 血行動態など維持できない場合, あるいは合併症などにより維持できないことが予想される場合は除いた. 〔方法〕1)低体温;体温は, 33±0.5度. Baxter社製体温維持装置RK-2000を用いた. 2)抗痙攣作用および頭蓋内圧低下などの目的でペントバルビタールを使用した. 導入(10時間)は4mg/kg/hr(小児6~8mg/kg/hr), 維持(その後)は1~2mg/kg/hr(小児2~3mg/kg/hr)で使用した. 3)その他, 軽度低炭酸ガス血症など従来よりの頭蓋内圧亢進症に対する加療は, 従来と同様に施行した. 〔モニター〕頭蓋内圧測定(クモ膜下カテーテル法), 脳表温, 直腸温, 動脈圧, Swan-Ganzカテーテル, 内頚静脈カテーテルなど留置した. 〔結果〕1)5症例の予後は, 1ヶ月後のGOS(Glasgow Outcome Scale)で, MD1例, PV3例, BD1例であった. 2)同時に測定した, 内頚静脈(球部)血の酸素摂取率(ER)では, 脳死移行例において, 頭蓋内圧の上昇のない病初期より顕著な低値が認められた. 〔結語〕1)低体温を加えない従来の加療に比較して, 予後において改善の傾向を認め, 補助療法として有効性が示唆された. 2)内頚静脈血の酸素摂取率(ER)は, 脳酸素代謝と予後との関係という観点より興味深いものと思われた.
ISSN:0288-4348