限局性壁運動障害が残存した心筋炎の1例

心筋炎急性期の壁運動障害は左室の奇異性運動ともいわれ, その程度と範囲は心筋炎の重症度による. これらは通常, 慢性期には壁運動障害を残さず改善する. 一部, 心室瘤を形成する症例や壁運動障害を残存する症例もみられるが, 一般的には程度の差はあれ, び漫性の障害を伴うものが多い. 今回我々は心エコー, 心筋シンチグラム, 左室造影上, 心基部に限局した壁運動障害を残した1症例を経験した. 症例は66歳, 女性. 約10年前より高血圧症にて近医に通院治療中, 感冒様症状に引き続き, ショック状態にて近医に緊急入院した. 心電図上, 心室頻拍を呈し, DCショック施行にて発作停止血液生化学では血清...

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Published in心臓 Vol. 27; no. 6; pp. 536 - 541
Main Authors 高尾雅己, 宮原嘉之, 室屋隆浩, 池田聡司, 内藤達二, 新北浩樹, 森光卓也, 波多史朗, 太田三夫, 宮原嘉久, 原耕平
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 丸善 15.06.1995
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ISSN0586-4488

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Summary:心筋炎急性期の壁運動障害は左室の奇異性運動ともいわれ, その程度と範囲は心筋炎の重症度による. これらは通常, 慢性期には壁運動障害を残さず改善する. 一部, 心室瘤を形成する症例や壁運動障害を残存する症例もみられるが, 一般的には程度の差はあれ, び漫性の障害を伴うものが多い. 今回我々は心エコー, 心筋シンチグラム, 左室造影上, 心基部に限局した壁運動障害を残した1症例を経験した. 症例は66歳, 女性. 約10年前より高血圧症にて近医に通院治療中, 感冒様症状に引き続き, ショック状態にて近医に緊急入院した. 心電図上, 心室頻拍を呈し, DCショック施行にて発作停止血液生化学では血清酵素の上昇と強い炎症反応を認めた. 心エコーでは, 左室壁運動は全体的に低下しており, 左室駆出率は34%と著明に低下していた. その後も心室頻拍を繰り返し, 精査加療の目的で当科へ転院となった. コクサッキーB群ウイルスをはじめとする血清抗体価の有意な上昇は認められなかったが, 冠動脈造影上有意な狭窄を認めず, 左室造影上冠動脈の支配領域に一致しない心基部に限局した壁運動異常を認めた. 右室心内膜生検の結果, 心筋内に単核球の浸潤を認めた. 以上の結果および臨床経過から, 本例は急性心筋炎と考えられ, 若干の文献的考察を加え報告した.
ISSN:0586-4488